電動化時代にロータリーエンジンを蘇らせたマツダ

 マツダは、電動車シフトが進む中でロータリーエンジン(RE)を復活させた。REは、ブランドスローガンの「飽くなき挑戦」を象徴する。シリーズ方式のプラグインハイブリッド車(PHV)に搭載する発電専用のエンジンではあるが、11年ぶりの復活とあって往年の「ロータリーファン」からの期待も大きい。マツダは地域によってパワートレインを選択する「マルチソリューション戦略」に基づいて電動化を進めており、今後、REの真価が問われることになる。

 REの復活には、社内外で待ち望む声が多かった。マツダは、1967年に世界で初めてREを搭載した量産車「コスモスポーツ」を発売した。その後、「ルーチェ・ロータリークーペ」や「サバンナRX―7」など多くの車種に搭載されたが、環境規制の強化や経営危機などもあって、その存続が危ぶまれた。

 車両の生産は2012年の「RX―8」で一旦終了することになったが、その後も社内では開発を続けてきた。今回開発したREを搭載する小型SUV「MXー30」開発責任者の上藤和佳子主査は、「マツダを象徴するエンジンを搭載する車両開発に携わることができて本当にうれしかった」と語る。発電専用エンジンとしての復活ではあるが、駆動用としての活用についてパワートレイン開発本部の富澤和廣主査は「さまざまなニーズに応えていきたい」と語った。

 RX―8に搭載していた「13B」のREは2ローターだったが、「8C」では1ローターとし、小型化を図った。ローター自体は中心から三角形の頂点で結んだ長さを指す「創成半径」を拡大して大型化を図り、排気量を拡大した。電気自動車(EV)を設定する車両にも搭載を可能とした。

 ただ、大型化したローターを量産化するには課題もあった。大型化した分、燃焼圧力が増加し、アペックスシールやサイドシール、コーナーシールのシール精度やバランス精度の向上が求められた。このため加工工程を変更し、汎用マシニングセンター1台ですべてを加工できるようした。13Bに比べ8Cでは精度を50%改善した。さらに、切削工程も13Bでは50工程あったが、9工程に削減。これまでの「スカイアクティブ」で培ってきた技術を活用し、バランスの修正加工を自動化した。精度は13Bよりも75%改善した。

 工程の自動化を進めて効率化してきたが、機械では判別できない「人の感覚」に頼る部分も残る。バランス精度は、現在3人いる「匠」と呼ばれる職人によって支えられている。気密性を保つ上ではシール部の組み付け作業が重要で、匠の指先に伝わる感覚がREの製造を支える。

 8Cではエンジンの軽量化にも取り組んだ。13Bではスチール製だったサイドハウジングをアルミ製に切り替えた。強度対策が課題となったが、溶射技術「高速フレーム法」によるセラミック溶射を用いることで強度課題を解消。軽量化と高い強度を両立させ、エンジン単体では15㌔㌘以上の軽量化につなげた。

 マツダは、同一生産ラインで複数車種を生産する「フレキシブル生産」を得意とする。工程のモジュール化などにより、多様なパワートレインや製品の仕様に柔軟に対応できるようにしている。マルチソリューション戦略を採るマツダが、電動化を進めていく上での鍵を握る。

 マツダの電動化は、2030年までに3段階に分けて進める。30年にはEV比率を40%に引き上げていく。ただ、地域によっては充電インフラが整っていない地域もあり、こうした地域にはREを搭載したPHVも一役買うことになる。

 REは、水素や液化石油ガス(LPG)などとの相性も良いとされている。REが脱炭素時代を切り拓くパワートレインとなり得るか注目が集まる。

(織部 泰)