インターネットの検索結果で上位に表示されたロードサービス業者に救援を依頼したところ、高額な金額を請求されるトラブルが後を絶たない。予期せぬ車の不具合や事故によるドライバーの動揺と、ネット情報を頼りに解決策を探したユーザーにつけ込んだ手口だ。「頼るべき先を間違わないで」と消費者庁や自治体をはじめ、損害保険会社、関連業界団体などは、注意喚起と被害の未然防止に取り組んでいる。
「料金の十分な説明がないまま作業され、十数万円もの高額な料金を請求された」「事前説明のないキャンセル料を請求された」「(お盆を理由に)特別料金として緊急対応費や祝日対応費などが加算された」―。全国の消費生活センターには、悪質ロードサービス業者の高額請求に関する相談が2024年1月~25年1月末に94件寄せられた。平均支払額は約11万円にも上る。
これらは、あるロードサービス事業者のウェブサイト上に記載された「基本料金3980円(消費税込み)~」「業界最安水準で対応可能」などを見て救援依頼したところ、実際は高額な料金を請求されたといった事例だ。昨夏以降、こうしたトラブルの相談が各地の消費生活センターなどに数多く寄せられていた。
消費者庁は調査の結果、「大和商会」と「関東バッテリートラブルセンター」と称する事業者が虚偽・誇大な広告・表示を行っていたとして、3月24日に消費者安全法に基づき両社のウェブサイトを公表し、消費者に注意を呼び掛けた。このうち、1社のサイトは同日以降に削除されたが、もう1社は現在も異なる屋号を使ったウェブサイトで事業を継続している。
消費者庁の発表を受けて、日本自動車連盟(JAF、坂口正芳会長)もロードサービス要請に関する注意喚起を行った。JAFへのロードサービス要請には、JAFの公式サイトや公式アプリの利用を呼び掛けるものだ。
三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、自動車保険に付帯しているロードサービスで、人工知能(AI)による音声受け付けを昨年導入。「バッテリー上がり」のみだった対象を今月7日から「ガス欠」も追加した。このほか、救援依頼の手段として電話や公式サイト、無料通信アプリ「LINE(ライン)」など幅広く用意している。24時間365日、全国からさまざまな手段でロードサービスを受け付けられるようにすることで、顧客が高額レッカー業者に依頼してしまうことによるトラブルの未然防止につなげる。
損害保険ジャパンは専門部署を4月に新設し、不正請求対策に乗り出している。新たなデータベースの構築を進めており、将来的には請求傾向を事前に把握するアラート機能の実装を目指す。これにより、蓄積されたデータに基づき客観的な視点から請求の妥当性を判断し、不正・不当な請求の抑制を図る。関係各所と情報連携を強化し、悪質な高額ロードサービス業者の拡大抑止も努める。
東京海上日動火災保険では、代理店向け勉強会で悪質ロードサービス事業者に関するトラブル事例を説明するなどの注意喚起を行っている。代理店には車検・点検や保険の契約更新などの顧客接点機会に、ロードサービス連絡先を改めて案内するよう依頼している。
消費者庁は、「ネット検索結果で『上位』だからといって、信用できるとは限らない」と消費者に呼び掛けている。事業者が広告費用を払えば、リスティング広告として上位に表示されるケースがあるためだ。そのため、「まずは契約している損保会社や保険代理店、ロードサービス会社に連絡することが最優先」と強調している。
日本損害保険協会(損保協、舩曵真一郎会長=三井住友海上火災保険社長)では、悪質ロードサービス事業者のトラブル事例を記載しているほか、動画共有サービス「ユーチューブ」でロードサービスに関する消費者トラブル防止広告を展開するなど、業界を挙げて注意喚起している。
(編集委員・平野 淳)