菱沼社長(写真中央)と曽宮部長(写真左)、赤津貴信サービス部長
菱沼進一社長

 業平自動車(菱沼進一社長、東京都墨田区)は、外国人スタッフの積極採用や女性社員の活躍支援など、長きにわたってダイバーシティ(多様性)の推進に取り組んできた。近年はシニアスタッフの〝生涯現役〟をサポート。生き甲斐を持ち続けるための支援のほか、人脈の生かし方やコミュニケーション活用術などを後進へとつないでいる。

 同社では70代以上のスタッフが車両販売や保険、フロントスタッフとして多く活躍する。現在の最高齢は88歳だ。菱沼社長は「半世紀以上の現場経験と人間関係が下町のエリアではものをいう。車のセールスとしては超一流の人たち。本人の希望と心身ともに健康なうちは働いていただきたい」と話す。

 就業はフレックス勤務とし、週に3~4回は出勤する。「働きやすい環境づくりも重要」(菱沼社長)と考えているためだ。そのほか、月2回は集合研修を行い、コンプライアンスや最新の保険の情報、業界知識などを学ぶ機会を設ける。曽宮実部長は「会社の信用にもつながること。仕事の部分では厳しく、仕事が終われば目上の人としてお付き合いをしている」と述べる。

 一方で、20代の若手社員の採用と育成にも注力する。菱沼社長は会社の将来を見据え「高齢者と若者の雇用は両輪で進めていかなければならない」と強調。スタッフの友人や知り合いの知り合いなど、身近なところにいる車好きの若者を探し、整備や板金、コーティングなど興味のある分野を聞いた上で「うちで働いてみない」と気軽に声がけをしているという。「実際に働いてみて当社に合うか、なじむための時間を設けることもある」とし、会社と個人の相性を確認するための期間も場合によっては必要とみている。実際、コーティング分野から入社し、整備士資格を取得したスタッフも在籍している。菱沼社長は「外国人スタッフも多く活躍してくれているが、車好きの若者に目を向けることも重要」としたうえで「整備士になるためのハードルが高いと感じる人もいるようだ。門戸を広げるためにも4級・5級整備士資格などがあれば、なり手はもう少し増えるかもしれない」と考えている。

〈受賞者コメント〉菱沼進一社長

 一度退職をした人を年齢で区切ることなく受け入れるというケースは他ではあまり聞いたことがない。この仕事は人と人とのご縁が非常に大切。退職された方を雇用しているのもご縁の一つ。客観的にみてそれが評価されたことは素直に嬉しい。結果的に社会貢献活動にもつながっていくだろう。今後も〝プロ軍団〟として活躍してほしい。

(太田 千恵)

=連載おわり=