東和本社・本社工場
久慈俊幸社長

 東和本社(久慈俊幸社長、岩手県紫波郡)は、社員に焦点を当てた独創的な多くの取り組みで、社員の自発性や行動力を生み出している。「社員が幸せになることを目標に掲げています」と、社員満足(ES)が向上することで、顧客満足(CS)向上にもつながった。

 同社は1955年に創業。現在は盛岡、水沢、二戸、大船渡の4拠点で、建設機械の修理をはじめ高所作業車や大型除雪車、道路舗装用車両など特殊車両の整備を行う。

 久慈社長は「経営の素人である私が33歳で社長になった。従業員は十数人いたが当時は赤字会社でした」と、社長就任当初は損益計算書の見方も分からなかった。簿記を勉強し、経営を学ぶために有名なコンサルティングを頼んだ。そして最初に行ったのが、社員のモチベーションを高めること。どうしたら社員の幸せと働きがいのある職場の提供ができるかを考えた。会社経営に関する書籍、成功者の本も読んだ。そして、成功事例の中から自社に応用できるものを積極的に取り入れた。「良いことはマネする」と常に情報や知識を学び取り入れている。久慈社長も整備士資格を持っているが「資格は持っているけれどペーパーですよ」と経営者は経営のことを常に考えるべきで、従業員と同じ仕事をしていてはダメだという。そして企業は利益を出さなければならない。そのために何をするか「GIVE AND TAKE」であるという。先に与えなければリターンはない。同社では、物価高で従業員が困っていると感じ、この4月から給与を一律1万5千円引き上げた。年間にすれば1千万円以上の経費増だが「いずれは業績として帰って来る」と社員の幸せを目標にしている企業としてできることは実行する。しかし、これも企業として利益を上げているからできることといえる。

 特徴的なものとして、従業員に自ら目標を立てさせること。それは社員が自律的に動けるようになることを理想とし①昇給率②休みの日数③社員旅行先④ボーナス掛け数の希望-を各拠点で議論し発表する。もちろん、その目標を手に入れるためには、自らの拠点がどれだけ利益を出さなければならないか数字で示す。それが個々の目標となり、会社の経営計画策定に生かされる。全社員が売り上げや利益を考え明白な目標ができれば「当事者意識が芽生え、何を目標に仕事をするのかを社員が理解できる」という。

 久慈社長は、「ぜひ一度工場を見に来てほしい」とし、自らの経営の体験談や考え方、成功事例などを多くの企業に伝えたいと考えている。それも「GIVE」。そして自らも企業として発展させていく。

〈受賞者コメント〉久慈俊幸社長

 ESが評価され表彰されたことが大変うれしい。これからの時代はESなしでは会社は成り立たない。これからも社員の幸せのために努力していきたい。