修復技術を実践して見せることで、効果やノウハウを共有する
田中郁雄社長

 愛知県岡崎市の車体整備事業者、ティークラフト(田中郁雄社長)は、樹脂製部品補修用溶接機メーカーの米ポリバンス社の日本総代理店として、樹脂製部品の修復技術普及に力を注いでいる。各地で勉強会や講習を実施するなど、技術の将来性を訴え、普及促進を進める。

 車体の軽量化に伴い、樹脂素材の採用は加速したものの、日本の樹脂製部品の修理比率は5%程度といわれている。一方、アメリカでは同比率は約50%と、スタンダードな修理方法として定着。樹脂溶接技術は修理に用いる材料のコストが抑えられるだけでなく、修理を行う技術者の力量が求められ、車体整備士の技術に対する付加価値の創出という意味でも、国内でも注目が集まり始めた技術だ。

 総代理店として、日本での普及発展に尽力する田中社長の活動は、ポリバンス社が発行する公式マニュアルやカタログなどの翻訳をはじめ多岐にわたる。さらに各地で勉強会を実施することで、より実践的な技術やノウハウを伝授し、早期に修復技術を業務に組み込んでもらえるよう働きかける。注目度が高まり、有用性への期待は着実に高まっている半面、田中社長は「しっかりとした設備と技術力が求められる樹脂溶接を、それらが伴わない事業者が実施してしまうケースも少なくない」と指摘。「設備の導入費用は決して安価ではない」としつつも「しっかりと学び、高い技術を得ることこそ付加価値となり、信頼に変わる」と訴える。

 田中社長はさらに「もう部品が生産されていない旧車であっても、樹脂溶接で直せることは多い。愛車に長く乗り続けたいと強くこだわる顧客のニーズに応えられる」と語る。現状樹脂製部品の修復技術は人工知能の代行が困難な技術。田中社長は「車体整備の事業者が個社の独自性、唯一性をアピールするきっかけになる」と技術を生かした業界の発展に期待を寄せる。

〈受賞者コメント〉田中郁雄社長

 先端整備賞としての受賞と知り、大変に驚いた半面、これまでの活動が報われた感慨に、ここまでの苦労が吹き飛ぶ思いだ。交換ではなく、直すことでプラスチックの廃棄量が減るこの技術は、車体整備士に見合った評価と活躍を約束するだけでなく、プラスチックの廃棄量を減らす意味で、非常に時代とマッチしている。今後もこうしたメリットを生かし、訴求することで、活用した人が「使って良かった」と実感できるよう、活動を続けたい。

(春田 茉里)