環境対応型リサイクルポリプロピレン材の採用例(インドネシア向け「ギア125」)

 ヤマハ発動機は11日、二輪車でリサイクル樹脂の活用を広げると発表した。廃材を再利用するポリプロピレン(PP)を新開発し、2023年型のASEAN(東南アジア諸国連合)市場向けコミューターモデルから採用していく。マテリアルリサイクル材のほか、植物由来樹脂などの活用も増やし、ライフサイクルアセスメント(LCA)ベースでの二酸化炭素(CO2)排出を減らしていく。

 同社は、10年以上前からリサイクルPPの開発に取り組んできた。2010年以降、使用済み二輪車から回収したバッテリーケースなどをリサイクルしてカバー類などに採用している。ただ、バージン(新品)材に比べて強度を保ちにくく、採用箇所は一部に限られていた。

 今回、開発したリサイクルPPは、廃材のなかでも石油化学メーカーの重合工程で発生した中間材や成形メーカーで発生した端材といった「プレコンシューマー材」を用いる。強度や品質を安定化できるため、採用箇所を広げられるという。品質保証のトレーサビリティー(追跡性)が容易な利点もある。

 CO2削減も期待できる。樹脂のバージン材では、精製プロセスやナフサ(粗製ガソリン)の製造プロセスでCO2が大量に排出される。新開発のリサイクルPPは、CO2排出量の多い工程が不要だ。1トンあたりのCO2排出量で比較すると、バージン材は1.6トンだが、リサイクル材は0.3トン程度にまで抑えられる。

 バージン材に比べて材料の入手が限られるためコストは上がるが、「製品への価格転嫁をせず、自助努力で吸収できる」(調達本部調達統括部調達推進部原材料調達グループの中本一雄主査)とする。

 材料の確保が容易なASEAN市場から導入を進める。「ギア125」や「GDR125/155」、「WR155R」などの外装部品を皮切りに採用車種を増やす。まずは、従来使用していたリサイクル材から置き換えを進め、バージン材の置き換えも検討していく。

 二輪車に使われる樹脂は、PPやABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリアミド(PA)などがある。このうちの5割強を占めるPPからリサイクル材の活用を増やし、50年目標である「樹脂材の100%サステイナブル化」を目指していく考えだ。