オートリブが開発する二輪車向けエアバッグ類

 スウェーデンのオートリブは二輪車向けエアバッグ事業に参入する。車体に組み込むエアバッグのほか、ヘルメット内蔵型やベスト着用型などを開発し、2024年以降の発売や量産を計画する。二輪の世界総需要(ヤマハ発動機調べ)は21年で約4777万台。経済発展に伴う新興国などでの需要が見込める一方、交通安全に関する国連機関の中期目標に向け、二輪各社が安全対策を強化するとみられる。同社はこうした需要を取り込む。

 二輪車用エアバッグは、四輪車と同じようにセンサーで衝突を検知し、車体中央部からエアバッグを展開する。二輪車の乗員はシートベルトで拘束されていないため姿勢変化が激しい。同社は乗用車のノウハウを活用した。コンピューター支援設計(CAE)での解析や衝突実験により、特に前面の衝突事故時に頭や胸、頚(けい)部へのダメージを減らす効果を確認しているという。二輪各社に売り込みを進めており、25年頃の供給を目指す。このほか、衝突の衝撃で道路に投げ出された乗員の被害を軽減するため、ベスト着用型のエアバッグも開発し、24年の発売を目指している。前頭部が展開するヘルメット内蔵型や、自転車用のリュックサック型などの開発も進めている。

 オートリブが二輪車向けエアバッグ事業に取り組む背景には、世界保健機関(WHO)が年間で約130万人の交通事故死者を30年までに半減させる目標を決めたことがある。WHOによると、事故死者の半数以上が歩行者と自転車を含む二輪利用者だ。二輪エアバッグはホンダが06年に「ゴールドウイング」に世界初搭載したが、四輪車と違って装着が義務づけられていないこともあり、ほとんど普及していない。ベスト型エアバッグや「胸部プロテクター」も普及は道半ばだ。

 オートリブとしては、四輪車用の技術力や生産体制を活用でき、国連目標の達成にも貢献できる二輪車向けエアバッグを積極的に広めるため、さまざまなタイプの二輪車向けエアバッグを開発する考えだ。特に有望な東南アジアなどでは、二輪メーカーと連携したライダーへの安全啓発活動にも取り組む。

 同社は二輪車向けのほか、無人配送用自動運転車両向けのエアバッグや、電気自動車(EV)用の電流遮断器なども開発している。これらの新領域を「モビリティセーフティソリューション」と位置づけ、新たな需要を開拓していく考えだ。