樹脂を用いてEVの軽量化に貢献する(住友化学が開発したPES製インホイールモーターカバー)

 大容量バッテリーを搭載する電気自動車(EV)は、従来以上に車体の軽量化が求められる。そのため、部品などで金属から樹脂への置き換えが進む。樹脂を手がける化学メーカーは自動車向け製品の拡大に本腰を入れて開発に励む。また、ライフサイクルアセスメント(LCA)ベースでの温室効果ガス排出量削減に向けてはバイオマス(生物)由来やリサイクル由来の原材料を実用化するため、研究開発が本格化している。

 金属に比べ、金属と同等の性能を持つエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックは材料費が高い。ただ、加工性が高く複雑な形状にも対応できるため、「トータルコストは樹脂の方が安く済む場合もある」(化学メーカー)という。スーパーエンプラでは住友化学がレーシングカー開発企業と連携し、ポリエーテルサルフォン(PES)を用いたインホイールモーターカバーなどを開発。約200度の耐熱性を持ち、約150度まで上がると言われるEV用インホイールモーターにも対応できる見込みだ。PESへの代替により軽量化も図れるとする。

 環境対応では、リサイクルシステムの構築に向けた技術開発が活発だ。三菱ケミカルグループや住友化学は、テールランプカバーに使用するアクリル樹脂のケミカルリサイクルの開発を進めている。

 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)のリサイクルも今後進むとみられる。帝人はCFRTP「セリーボ」を車載向けで展開、市場への投入を進めることでリサイクルシステム構築を実現する。CFRPなどに使用する連続炭素繊維では、旭化成が東京理科大学などと独自の樹脂の分解方法を開発、連続炭素繊維を取り出せる技術を生み出した。

 EVに求められる軽量化と環境対応性能を両立した素材開発が今後も加速していく。