ソフトウエアが自動車の進化を定義する「ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)」の概念が浸透し始めた。ソフトウエアによって自動車を高機能化させる技術の多くは部品サプライヤーが持つため、国内外のメガサプライヤーを筆頭に、部品メーカー各社がSDVに対応したソフトウエア開発体制の強化と、製品、サービス提供の拡充に乗り出している。

 「今後もハードウエアを提供していくが、さらに重要なのがソフトウエア。2030年には自動車のソフトウエアの価値は現在の3倍になるとみている」。コンチネンタルの技術幹部がこう指摘するように、自動車の価値がハードウエアからソフトウエアに移行しつつある。

 その一つの要因となっているが、自動車に求められる社会的役割の変化だ。単なる移動手段だった自動車は、今後は道路や電力網などと密接につながるモビリティに進化し、社会インフラの一つとして機能する。電動化や自動運転、コネクテッド化は基盤技術となるもので、その制御やオペレーションを担うのがソフトウエアということになる。

 SDV対応を急いでいるのがメガサプライヤーだ。ロバート・ボッシュは、ソフトウエアとエレクトロニクスを集約した「クロスドメインコンピューティングソリューション事業部」を21年1月に新設。コンチネンタルは15年にエレクトロビットを買収するなど継続的にソフトウエア開発能力を重点的に拡大している。

 デンソーもソフトウエア対応を強化する。今後10年間で10兆円を投資する計画で、投資領域は電動化に加え、ソフトウエア開発へとシフトさせる方針だ。

 SDVでは従来のハードウエアとは異なるビジネスモデルの構築が求められる。新しい機能やコンテンツがOTA(オーバー・ジ・エア)を通じて追加されるためだ。これまでのソフトウエア事業はライセンスの付与や保守などが中心だったが、これからはソフトウエアアップデートによる機能追加もビジネスになるとみられる。部品メーカーのみならず、自動車メーカーも巻き込んだ新たなソフトウエアビジネスの創出が進む見通しだ。