年々人気が高まっているキャンピングカー。このほど開かれた「東京キャンピングカーショー2025」では、別荘やホテルのような上質でゆったりした空間を追求するキャンピングカーが展示された。2段のダブルベッドやウォーターレストイレなどが売りだ。また、世界的画家の作品をデザインした新型車も登場した。架装各社はより快適なキャンピングカー旅行を求めるユーザーの需要に応えながら、資産としての価値へのニーズにも気を配っている。
カヤバはフィアットの「デュカト」をベース車に、上質な空間を追求した「ヴィラトール」を開発した。コンセプトは〝別荘を持ち運ぶ〟。デザイン事務所のヴォイド(名古屋市天白区)を率いる丹羽浩之代表の協力も得て実現した。
大人3人がゆったり就寝できる1.8㍍四方のフルフラットベッドやベンチソファ―を完備し、吊り戸棚はケヤキの木目を生かしたデザインで上質感を演出した。また、リアゲートから伸びる大型のオープンデッキを利用して旅先の風景を楽しみながら食事や読書などもできる。
ショックアブソーバーの代表的企業であるカヤバらしく足回りにもこだわった。今回、ヴィラトール専用ショックアブソーバーを開発した。旋回時も安定した姿勢を維持できる。同社は「一味違う走行も提供する」としている。展示車の価格は2203万2900円(消費税込み)。
トイファクトリー(藤井昭文社長、岐阜県可児市)もデュカトをベース車に新型車「ブルージュ」を開発し、販売を始めている。ベルギーで〝屋根のない美術館〟とも称される都市、ブルージュにちなんで命名した。ターゲットとするユーザーは主にファミリー層だ。リアに設置した2段のダブルベッドは1段に大人2人が就寝できる。また、トイレや化粧室として利用できる個室には鏡扉や収納スペース、コンセントを設けた。冷蔵庫や電子レンジ、シンク、収納スペースなどキッチンスペースの機能性も高い。本体価格は1474万円(同)だ。
また、加藤モーター(加藤健資代表、新潟県燕市)は、パブロ・ピカソの作品をデザインした「パブロ」を開発した。2025年に同社は創業70周年を迎え、パブロ・ピカソの生誕145周年と重なることから記念モデルとして発売したという。ピカソの作品をライセンス提供する「ピカソ インターナショナル ジャパン」(宮谷幸藏代表、沖縄県浦添市)が運営する「ピカソ リ デザイン」とコラボしており、著作権上の問題はクリアしている。
加藤代表は「約300点の作品の中から鳩を題材にした作品を選定した。平和の象徴でありピカソが幼いころから鳩を愛していたため、選んだ」という。ベース車にはトヨタ自動車の「ハイエース」を採用した。スライドドアやシートなどにピカソの作品をデザインした。
販売台数は限定5台と、希少性も高い車両となっている。展示車価格は1102万5300円(同)。加藤社長は「機会があれば次もピカソの作品で車両を手がけてみたい」と話した。
キャンピングカーはリセールバリューが高く「資産としてもキャンピングカーを保有するユーザーも増えている」(架装メーカーの担当者)という。5年落ち程度でも新車時の価格の6~7割前後で買い取られる例も多く、ユーザーにとっては魅力的だ。各架装メーカーにとっては、利便性だけでなく、資産的にも価値が高い車両をいかに開発していくかも重要なポイントになりつつある。
(梅田 大希)