酒井商會(酒井志郎社長、長野県須坂市)は、交通安全やあいさつ、防犯などの重要性を地域住民に啓発する活動に力を入れていることで知られる。同社は1910年に酒井自転車店として創業した歴史ある企業だ。酒井社長は「子どもたちやお年寄りら地域の皆さんにとって必要不可欠な企業でありたい」と話す。
特に力を入れているのが学校を訪問し、子どもたちに対してあいさつの重要性を伝える活動だ。酒井社長が講演をしたり、社員らがレンジャーにふんして寸劇を披露したりしている。酒井社長はあいさつについて「相手にあなたの存在を認めていると伝え、人の心を笑顔にさせる効果がある」と強調する。あいさつ以外の啓発にも取り組む。地元の警察署と協力してチャイルドシートの使用やシートベルトの着用を呼び掛けている。
取り組みの背景には、さまざまな国際比較調査で示された日本の子どもたちの自己肯定感の低さに対する危機感がある。いじめを受けたことなどがきっかけで若者が自ら命を絶つ事例も各地で発生している。酒井社長には「自分には大きな可能性があることに気付いてほしい」との願いがある。地域コミュニティーの希薄化も指摘されており「あいさつにはコミュニティーをつなぎ、犯罪を抑止する効果もあるのではないか」(同)と力を込める。
主力事業は整備、車販、保険販売などだが、地域にとって必要と考えれば異業種への進出もいとわない。リハビリデイサービス施設をフランチャイズ形式で運営するために別会社を立ち上げ、2020年4月にオープンした。歩行訓練により足腰の機能を高めることに力を入れており、酒井社長は「将来は須坂市内や(隣接する)小布施町、高山村で計3店舗くらいを運営したい。高齢者の皆さんには一生歩ける体になってもらいたい」と話す。
自転車店として創業した同社。現在は「要望があれば自転車も仕入れて売っている」(同)状況だが、今後は自転車も積極的に扱っていきたい考えだ。世の中に流通している自転車の中には安全性の高さに疑問があるものもあるといい、「信頼のおける自転車をメンテナンスしながら乗ってもらいたい。初めて自転車に乗る子どもたちのサポートもできれば」と考えている。
〈受賞コメント〉
酒井志郎代表取締役
全国紙にこうした形で評価され、本当にありがたい。評価されたことでこれまでの取り組みをさらに進化させていかなければならないとの思いが強くなった。社員を増やし、異業種にも積極的に進出していきたい。社員が増えれば、啓発活動を担う社員の数も増え、世の中にあいさつの重要性をさらに広めることができると考えている。これまでの延長線上で物事を考えるのではなく、もっともっと研究を重ねていきたい。
(諸岡 俊彦)