社長の顔入り看板は「65歳以上専門店」ほか各施策で採用している
石川博之社長

 おまかせオート石川(石川博之社長、栃木県那須塩原市)は、車販と整備を主体に2010年に創業した。石川社長は以前、栃木県内のディーラーで長く、店長を務め、メンテナンスパックや保証プランの加入などの取り組みで高い実績を上げるなど、顧客との良好な関係性を築いてきた。独立に至った理由の一つに「自ら経営すれば、制約を受けずにやりたいことをもっと自由にやれる」(石川社長)との考えがあった。また、事業を一から始めるにあたっては、「他と違った特徴を打ち出すことが必要だった」(同)とし、顧客獲得のための戦略を大胆に打った。

 開業時にまず取り組んだのは、石川社長自らが店の看板に登場するという手法だ。〝広告塔〟という言葉通り、人物が大きく掲げられた看板は見る人にインパクトを与え、効果はてきめんだった。かつて、ディーラー時代に付き合いがあったユーザーにも知られるようになり、来店につながった。このユニークな手法は、コロナ禍で昨年よりはじめた地域の飲食店を応援する「グルメ車検」のPR看板でも取り入れ、地域で評判になっている。

 一方、集客の間口を広げるために「タイヤの安売り」を打ち出した。店舗のある県北部は降雪エリアで年2回の履き替え需要があり、関心を集めた。その手法は不特定多数に向けた集客ではなく、顧客から知人を紹介してもらえるような対応を心掛け、タイヤ販売を入口に一度利用したユーザーへ手厚くフォローし、リピーターにつなげた。

 フォローの一例では、タイヤやオイル交換を含め利用者全員に社員が手書きによる御礼のはがきを送付。さらにお客さまへの電話コールと、社員一人ひとりが近況を添えたメッセージを手書きの文面で作成したDMを毎月送付し、これらを継続することで支持を集めた。

 このように「すべての顧客をリピーターに」を徹底して取り組んだ中、「やりたいこと」として20年1月に立ち上げたのが「65歳以上専門店」だ。きっかけは以前より、高齢化により乗らなくなった顧客のクルマを引き取る機会が増えていた中で、「親しみを感じているお客さまに対し、少しでも自分たちがやれることをしてあげたい」との強い思いからだった。安全機能を搭載したクルマ選びや購入後のフォローはもちろんのこと、「クルマに乗れなくなってからのフォロー」を大切にする。年会費1千円を申し受け、毎月の電話連絡、車いすレンタル(1年間無料)、電動車いすレンタルなどでクルマを手放した後の生活をフォローする。必要に応じて、地域の業者と連携し訪問支援なども行う。「お付き合いした以上はそこまでかかわりたい。自分がそうなったときに困らないような地域にしていきたい」とし、社会貢献として取り組む考え。

 〈受賞者コメント〉

 石川 博之社長

 賞をいただいたことはうれしいが、これで終わりではなく、こうした取り組みがほかの地域でも普及してもらいたい。

 困っている人がいる以上、少しでもフォローの活動が広がることを望んでいる。

(清水 泰典)