環境に優しい取り組みが、整備士の採用でも好影響を与えている
今野秀明代表取締役

 沼津中央自動車(今野秀明社長、静岡県沼津市)は、自社で使用するエネルギーの削減など、環境に配慮した取り組みに力を入れている。外部故障診断機(スキャンツール)を使用して入庫車両の状態を診断し、クルマの燃費向上につなげる取り組みも行っている。エコな活動の推進は整備スタッフの採用活動にも好影響を与えている。

 カーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)やSDGs(持続可能な開発目標)の達成が叫ばれる中、エコな取り組みに着手する整備事業者は珍しくない。一方でその熱量は事業者によって異なる。そうした中で、同社は水や電力などの使用抑制やペットボトルのキャップ回収など、エコな取り組みを徹底。持続性推進機構(IPSuS、森本英香理事長)が企業の環境対策などを評価する「エコアクション21」の認証も取得した。社員が通勤や営業に使用する車両の走行距離やガソリン使用量も記録して一覧にしており、エコな運転に対する社員の意識向上を狙う。

 同社が強く意識するのが、整備や点検などの業務で環境にやさしい取り組みを進めることだ。2008年ごろから車検や点検で入庫するスズキ車にスキャンツールを使った診断を行ってきた。クルマの電子制御ユニット(ECU)に残った記録を確認することで車載コンピューターの適正な状態を維持し、燃費の向上につなげている。顧客からは「そんなことまでやってもらえてありがたい」との声が多い。

 電気自動車(EV)の普及を見据えた取り組みも進める。ショールームの入口にはEV向けの充電ステーションを設置し、工場内には整備をしながらEVを充電できるコンセントを用意している。

 取り組みを周知するための活動にも力を入れる。実践しているエコな取り組みをまとめた「環境経営レポート」を作成し、顧客や業界関係者に配布している。効果は採用にも表れた。整備士の確保に苦労している事業者は多く、同社も10年ほど前は「人が少なくて困っていた」(今野社長)という。2年ほど前、自動車関係の学科がある地元の私立高校から学生2人が受験に訪れた。面接時に環境経営レポートを手渡したところ、2人とも内定を承諾し入社した。子どもが自宅に持ち帰ってきた同レポートを保護者が読み、「社会や環境のことまでしっかりと考えている会社なら安心では」と考えて子どもたちの背中を押したという。2人とも卒業時に3級整備士の資格を取得しており、入社後の成長も目覚ましく、貴重な戦力になっている。今野社長は「レポートの内容をさらに充実させることで顧客や同業者に環境への関心を高めてもらいたい」と意気込んでいる。

 〈受賞者コメント〉

 今野秀明代表取締役

 受賞を知った時は率直にとても驚いたが、ありがたかった。これまでさまざまな賞に応募し、審査員の方からコメントをいただくことでさまざまな気付きを得てきた。取り組みをまとめた冊子の発行もその一つだ。今後もこれまでの取り組みを続けながら、環境のために何か他にできることがないかを模索し続けていきたい。情報発信を通じて活動の輪を広げていきたい。

(諸岡 俊彦)