将来を見据え、社員提案を生かした新事業にも積極的に挑戦していく
竹田 好宏社長

 竹田オート(竹田好宏社長、大阪府河南町)は、約10年前に現会長で父の正美氏が経営していた分解整備工場の山本自動車工業所(大阪府富田林市)の事業を承継することで、経営統合を実現した整備工場だ。同社は元来、竹田社長が2003年に板金塗装(BP)工場として設立し、正美氏の整備工場とは別に独立して経営に取り組んできた。

 竹田社長は当初、BP工場に就職し、BPの技術や知識だけではなく、補修部品の仕入れや価格交渉の方法などを習得した。この経験値が同社の経営や事業拡大に大いに役立っているという。竹田社長はBP工場を立ち上げた後、正美氏に整備業界を取り巻く市場環境や企業経営をめぐる危機意識を訴えることで、両社の経営統合について合意にこぎ着けた。

 同社は顧客獲得策の一環として、損害保険会社の指定(提携)修理工場になるために損保会社訪問などに注力した。この取り組みにより、現在は損保会社9社の指定修理工場となった。この結果、BP入庫台数の拡大に加え、南大阪エリアをはじめ、奈良県や和歌山県などでも、BP以外にも車検や点検整備などで商圏を広げることができた。

 事業拡大のほかに、休日を増やす一方で残業をなくすなど、職場環境の改善にも取り組んでいる。作業効率の向上も図っており、企業向けのクラウド型ビジネスチャットツール「LINE WORKS(ラインワークス)」を導入。社員間の連絡を円滑に取れるようにして、顧客からの受注や問い合わせへの迅速な対応を可能にした。クラウド型の会計ソフトも採用することで、日常の会計・経理業務を自動化して労働時間の短縮にもつなげている。

 同社の将来を見据えた新事業にも乗り出す。昨年1月に農業法人「サニー農園」を設立した。竹田オートの近くの田畑でオリーブや米などを栽培しており、大阪府内の飲食店などに向けて米などの販売を始めている。竹田社長は「オリーブの栽培が本格化すれば事業も軌道に乗り、社内で利益を還元できる」と期待を述べる。同社はキッチンカーの販売にも取り組んでいるほか、二輪車の整備なども検討している。「社員自らがやりたい仕事を提案してくれるような会社が目標だった。この目標に確実に近づいており、社内は活気に満ちている」(竹田社長)と述べる。

 〈受賞者コメント〉

 竹田 好宏社長

 多くの有力な整備工場がある中、当社のような小さい会社が選ばれるとは想像できなかったが、率直に嬉しかった。整備業界などの関係者に当社を正確に評価していただいたと認識している。元々自動車整備業界に入り、経営者になるつもりだったが、父とは距離を取ることで違う視点を持つことができたように見える。この点は業界の中では珍しいといえる。今後はさらに社員が働きやすい会社にするように職場環境の改善など経営努力を続ける。

(関西支社・松尾 隆浩)