オンラインミーティングや研修に活用できるミーティングボード「MAXHUB」を導入した
佐藤憲司代表取締役

 大型車整備に強みを持つツカサ工業(佐藤憲司社長、長野県大町市)。同社がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むきっかけとなったのが、2017年4月に開始された継続検査のワンストップサービス(OSS)だ。その後も共有クラウドファイルでの情報の一元化や検査ラインと整備システムを連動させた指定整備記録簿の印刷、ビジネスチャットの採用、ウェブ会議システムの積極的な活用などにスピード感を持って取り組んでいる。

 継続検査のOSSの開始と同時に、保安基準適合証(保適証)の電子化を開始した。開始直後には、大型特殊自動車の一部にある付属装置付き緩和車両(三段書き)に電子保適が対応していないことなどの課題もあったものの、整備振興会や運輸支局などに掛け合いながら進めてきた。佐藤社長は当時について、「指定整備工場としてやらないという選択肢はなかった。そして、やるからにはすぐに取り組みたいと思った」と振り返る。

 佐藤社長自身はデジタルやIT分野について「ネットサーフィンや仕事で使うくらいのレベル」と話す。ただ、興味はあったため、自分自身で学ぶ機会を増やしたという。また、ブログやSNSでの情報発信は続けていたため「情報を入手しやすい環境だったかもしれない」と考えている。

 20年7月には、「DXの転換期」と佐藤社長が位置付けるきっかけとなった「ICT事業部」を立ち上げた。同事業部では、デジタルツールなどを苦手とする同業他社に向けて、ウェブ活用の提案やウェブサイトづくり、ウェブ会議の有効性、ビジネスチャットの利便性などを周知していく。佐藤社長は「整備業を展開する同業同士だからこそできる提案や見せ方がある」と強調。「ネットを使って便利になっただとか効率化できたと実感するきっかけをつくるお手伝いができればうれしい」と考えている。

 今後については車検証の電子化に向けた準備や固定電話のクラウド化、社内外でやり取りができるインカムアプリの導入を進めているという。とくに車検証の電子化については「足りなかった部分が解決でき、大幅な利便性向上につながるのでは」と期待する。一方で、「納税証明書を持ってこないお客さまもいる。その場合は納税確認ができずタイムラグを考えなければならない。申請事業者でも何かしらの方法で確認できる方法があればよいのだが」と課題を指摘する。その上で「業界をより良くするために、できる提案は積極的に行っていきたい」と前向きに語る。

 〈受賞者コメント〉

 佐藤憲司代表取締役

 すべての始まりは備忘録として書き続けてきたブログ。このブログやSNSがあったからこそ、いまがあるといっても過言ではない。今回の受賞は非常に励みになった。この受賞に恥じないように、今後も、業界の活性化に貢献していきたい。

(太田 千恵)