HV・EV・PHEVなどさまざまな入庫があるため新技術対応や知識の習得は欠かせない
江島哲也取締役自動車事業部長

 橋本屋 民間車検場テックス大塚(東原孝能社長、東京都豊島区)は、リースメンテナンス領域で30年以上の実績を持つ。整備業界では〝リースメンテは収益性が低い〟とも言われてきた。同社では、さまざまな仕組みの構築や巡回サービスカーの導入、納引きスタッフの拡充によるメカニック人材の業務効率化などにより、高い収益性の確保を実現した。合わせて「リース会社とのコミュニケーションが何よりも重要」(江島哲也取締役自動車事業部長)と考えている。

 同社は1897年の創業以来、燃料や石油製品などのトータルサービスを手がけてきた。リースメンテナンスに本格的に取り組む一つのきっかけが、ガソリンスタンド(給油所)を閉鎖したこと。それ以前からリース会社との取り引きはスタートしていたものの、車両スペースが確保できたことで大幅な台数引き上げが可能となった。ピーク時には35社と契約していたが、リース会社の統合などもあり、現在は27社から約4400台を受託する。

 リースメンテナンスで安定的な収益を確保するために、江島取締役が取り組んだのが台数、売り上げ、仕入れ、利益などの正確な数値の把握だ。同社では50日ごとに数字をチェックする。1日に約60台、月間約1300台の入庫台数があるため「肌感覚では正確な把握は難しい」(同)とし、ソフトを活用した売り上げ分析を行う。その結果、同一車種、同一内容であっても部品レスや交換工賃の有無で、リース会社ごとに大きな差が出ていることが明確になった。数字の裏付けを基に、リース会社と価格交渉をしたこともあったが、「求めるばかりでなく、ギブアンドテイクでなければ成立しない」とも強調する。そのため、同社が重視するのは決められた基準の中で実施率を引き上げ、緊急整備をなくすことや請求タイミングを迅速に行うことだという。

 また、メカニックによる交換項目の取りこぼしや迷うことがないようにするため、リース会社別交換基準表を作成した。パウチしてツールスタンドに置くことで、メカニックは確認しながら点検することができる。一般客とリース車では交換基準が異なるため、個人の記憶や経験などに頼ることなく、だれでも同じような交換作業の実施を実現できるようにした。

 車両の電子化などに伴い、交換部品も減少傾向にある。今後は台数の追求ではなく、台当たり単価の引き上げを重視する。「予防整備を徹底し、プラスアルファの提案を積極的に推進していきたい」と考えている。

 〈受賞者コメント〉

 江島哲也取締役自動車事業部長

 受賞発表後、各方面からも祝福の声をたくさんいただき、非常にうれしく思っている。整備業界とリース会社がうまく融合していくために、少しでも橋渡しができればと思っている。業界の発展のために貢献していきたい。

(太田 千恵)