体系的に管理するデータの分析に基づいて整備や車販提案を行う
成田隆雄さん

 ナリタ(成田俊隆社長、静岡県藤枝市)は、点検に独自のチェックシートを導入し、蓄積したデータの分析に基づく整備や車販の提案を行っている。データの体系的な管理には無料のウェブツールを上手く活用し、データ収集に必要な投資には余念がない。各種測定機器や本の購入、同業者からの情報収集にも熱心だ。整備担当の成田隆雄さんは「車両は新車納車時の状態が最高峰で、それを維持し続けることが役目」と話す。

 同社は車検や12カ月点検ごとに、バッテリーのCCA(性能基準値)や始動・充電電圧、ブレーキパッドの残量、タイヤの残り溝や空気圧、車載式故障診断装置(OBD)の診断データなど、ありとあらゆるデータを収集する。不具合で入庫した車両も単に直すのではなく、壊れた原因を解明するため徹底的に調べる。尊敬する、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも取り上げられた小山自動車の小山博久さんの教えを忠実に実践する。

 徹底したデータ収集と分析を実施するのは「故障を予測するとともに、故障の確率を下げるのが目的」(成田さん)という。必要なデータの収集のためには積極的にテスター類などを買い足し、参考資料や同業他社との情報共有にも力を入れる。「ユーザーの日常生活の大切な移動手段として欠かせない車だから、トラブルなく安心して乗り続けてもらいたい。そうするのがわれわれの役目」(同)と、妥協を許さない。

 こうしたデータを効率的かつ場所を問わずに利用可能としてきたのがデジタルツールだ。整備事業者向けのクラウド型システムを除けば、オフィスソフトやオンラインストレージなど基本的に無料で利用できるサービスだ。整備現場ではチェックシートを一旦印刷。点検・記入後にスキャンし、電子データとして保存する。適材適所で利便性を考慮してツールを使い分け、ウェブサービスでは「試してみて楽しいと感じたら利用してみる」(同)が継続のコツという。

 また、会員制交流サービス(SNS)を使った情報発信にも積極的だ。フォロワー数は「ティックトック」が約33万人、「インスタグラム」が約12万人、「ユーチューブ」が約5万人(すべて6月末)に上る。各SNSには実際に使用した工具のレビューや作業風景を投稿している。投稿は集客を目的としたものではなく「全国の整備士とつながる」ことが狙いで、人脈づくりに役立てている。

 〈受賞者コメント〉

 成田 隆雄さん

 受賞は素直に嬉しい。取り組みの認知が高まり、真似をしてくれる整備工場が出てきてくれたらさらに嬉しい。真似できることを第一として施策は設計している。自分だけができても仕方なく、非常に簡単なことしかやってはいない。これが広まっていくことを期待している。

(村上 貴規)