カワサキはイタリアの二輪車ショー「EICMA」で2022年に電動車を投入する方針を発表
ヤマハ発動機が投入する電動スクーターの試作車
BMWの「CE04」

二輪車メーカーが2022年に新型の電動二輪車を相次いで投入する。ヤマハ発動機は125cc級の電動スクーターを日欧で発売する。カワサキモータースは3種類の電動車を発売する方針だ。BMWも400cc級の電動スクーターを市場投入する。欧州を中心に世界で環境意識が高まるなか、電動車を投入し、社会的なニーズに応える。3社の新型車が価格や航続距離をどれだけガソリン車に近づけることができるか。四輪と比べて厳しいとされる二輪の電動化の現在地を示す指標となりそうだ。

ヤマハ発が投入するのは、自社開発では初となる125cc級の電動スクーター。スペックは現時点で公表していないが、航続距離が29kmの「Eビーノ」と比べると「全然レベルが違う距離を走ることができる」(日髙祥博社長)という。22年春をめどに日本と欧州で発売し、その後、販売地域を広げていく方針だ。

BMWは、400cc級の電動スクーター「CE04」を投入する。14年に発売した大型の電動スクーター「Cエボリューション」と比べて一回りコンパクトにした。航続距離は130kmになる見通し。欧州だけではなく日本への展開も視野に入れているという。

両社がスクーターを投入する一方、カワサキが開発を進めるのがスポーツタイプの電動車。同社は25年までに10機種以上の電動二輪車を投入し、35年までに先進国の主要モデルをすべて電動車に切り替える方針を掲げている。その第一弾となるモデルを22年に発売する見通しだ。21年11月にイタリアで開かれた二輪車ショーで伊藤浩社長は「ガソリンエンジンは優れているが、電動パワーユニットも素晴らしい」と述べ、少なくとも3機種の電動車を投入する方針を示した。

各社が投入する電動車で注目されるのは価格帯だ。ヤマハ発のEビーノの場合、航続距離はガソリン車の「ビーノ」と比べて9割以上短いにもかかわらず、価格は約26万円と3割近くアップする。ハーレーダビッドソンが20年末に日本で受注を開始した「ライブワイヤー」は航続距離が235kmで価格が約350万円。いずれのモデルも割高な価格と短い航続距離がネックとなり、販売台数は伸び悩む。ヤマハ発は新型の電動スクーターをまず実証実験を兼ねたリースで販売することとし、ユーザーの反応を見たうえで今後の商品開発の方向性を定めていく考えだ。

国土交通省によると、二輪車が国内で排出する二酸化炭素(CO2)は79万トンと、日本全体のCO2排出量のわずか0.074%に過ぎない(18年実績)。全体の15%を占める四輪車と比べると環境に与える影響は小さい。それでも世界がカーボンニュートラルを目指す以上、二輪も電動化の波は避けて通ることができない。各社は合成燃料の活用などエンジンが残るシナリオにも備えつつ、電動車の商品力向上へ開発を急ぐ。

(2022/1/4修正)