テスラ車の車載ディスプレーに表示されたアップデート画面

 自動車の進化をソフトウエアが主導する「ソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)」時代が到来している。車両電動化や環境対応、先進運転支援システム・自動運転などの安全技術を高度化するにはソフトウエアに依存せざるを得なくなっているためだ。「車の価値は相対的にソフトウエアにシフトしている」とみる部品サプライヤーは少なくなく、ハードウエア重視だった自動車製造業は変革を迫られている。

 ソフトウエアへの比重が高まっている背景には、地球温暖化によるエネルギー問題をはじめ社会情勢の変化によって自動車に求められる価値が変化していることがある。自動車がモビリティとして新しい価値を提供するには、従来のハードウエアの改良だけでは対応できなくなっている。

 ソフトウエアで自動車を高機能化する技術の多くはサプライヤーが持つ。そのため、ソフトウエアを搭載した半導体や、これらをモジュール化した電子部品を供給するサプライヤーにとってソフトウエアファーストを早期に確立することがビジネス拡大のチャンスにつながることになる。

 それでもソフトウエアがハードウエアと並ぶ事業になるかどうかは不透明だ。無線通信を使って車両のソフトウエアをアップデートする「OTA(オーバー・ジ・エア)」を活用して、ソフトウエアをメンテナンスしたり、新機能を追加したりするビジネスは想定できるが、顧客が料金を支払うかどうかは計り知れないところがあるのが実情だ。 

 SDV時代の到来とともにソフトウエアをマネタイズし収益化するという、これまでの自動車業界にはなかったビジネスモデルの構築も求められることになる。