角田裕毅(つのだ・ゆうき)

スクーデリア・アルファタウリ・ホンダの来季のドライバーに今季F2で3位に入賞し、新人賞も獲得した角田裕毅選手が選ばれた。日本人のF1ドライバーは小林可夢偉選手以来7年ぶり。ホンダが2021年を最後にF1から撤退するだけに、日本のモータースポーツファンにとって角田選手にかかる期待は大きい。日本のモータースポーツの未来を担う20歳のF1ドライバーが思いを語った。

―日本人としては7年ぶりのF1ドライバーになる。契約時の心境は
「契約書を目の前にするとテンパってしまい、手汗をすごくかいた。手汗が多かったのでペンを落とさないように気をつけていた(笑)。(レッドブル・モータースポーツアドバイザーの)ヘルムート・マルコさんと握手する時は先に『自分の手汗すごいですよ』と許可を得てから握手した(笑)」

―F1昇格を果たした角田選手の一番の強みは
「僕が思うに1発の早さ。もちろん、レースに勝つことが最も重要だが、2020年のF2では4回もポールポジションを取ることができた。そこをマルコさんが気に入ってくれたのではないか。あとは、最終グリッドスタートだったバーレーンの1戦目で6番手まで順位を上げられたオーバーテイクのスキルも評価してもらえていると思う」

―目標は
「まずはルーキーらしく戦いたい。特にシーズン中盤までは、自分らしい攻めるドライビングを貫く。ミスをしてもいいので、できるだけ大きく自分の限界値を探っていきたい。チームメイトには経験豊富な方(ピエール・ガスリー選手)もいるし、良い所を吸収していけると思う。後半にかけては中盤までに集めた引き出しを成長につなげていく」
「もちろん優勝は目標だが、チームのためにとにかくポイントを獲得していきたい。目標としているドライバーはあまりいないが、戦ってみたいのはルイス・ハミルトンやマックス・フェルスタッペン、フェルナンド・アロンソ。ハミルトンは自分が7~8歳くらいの時に富士スピードウェイでマクラーレンに乗っていた頃の走りをよく覚えている。子供の頃から見ていた人と戦えると思うととても楽しみだ」

―ガスリー選手の結果を上回ることも重要になるが、勝負のポイントは
「そこは自分も分からない。シーズン中盤まではガスリー選手のことを気にせずに自分の走りに磨きをかけたい。凄いドライバーであることに違いないので学べる所も多い。そういった部分を自分のものにして最終的に彼に勝てるシーズンにしたい」

―12月15日にアブダビで開かれたヤングドライバーテストに参加した時のメニューや感想は
「初めて最新のF1に乗ることができて新鮮だった。タイムは全体で5番手と悪くなかったが、戸惑いもあった。F1マシンで一番実感したのはブレーキの違い。踏力を強めた時に首が前に持っていかれる。徐々に慣れていったが、1日の終わりにはヘッドレストに首をもたれかけないと力が入らなくなっていた。シーズンインまでに首のトレーニングをこなしていきたい」

―F1を目指し始めたのはいつごろだったのか
「自分がレースを始めたのは4歳の時でフォーミュラーカーに乗り始めた16歳まではカートを続けていた。その時は目の前のレースや次のクラスへのステップアップしか頭になかった。F1を意識し始めたのは2019年にF3にチャレンジし始めた時くらいからで本当に最近のこと」

―レッドブルの育成プログラムで得られた成果で大きかったものは
「特にメンタルの部分で成長できた。もともと僕は先のことを考えすぎる部分があった。例えばレース前にスーパーライセンスをとれなかったらどうしよう、このレースでしくじったらどうしようと。それで焦りが出てしまうのが弱点だった。それを改善するために、メンタルトレーナーと取り組んできた。シーズン中盤あたりからは、1コーナーのブレーキングのタイミングやシフトチェンジなどレース前に決めたプランを一つずつこなすことに集中するように考え方を変えていくことができた。あとは前に無理やり入り込まれた時に冷静に対処できるようになったこともスーパーライセンスの獲得につながった」

―電動化やバーチャルレースなどレースの世界も変わっている。若い世代として2030年のF1はどのように変化していると思うか
「世界が環境を重視している。燃料もバイオ系など環境に優しいものに変化していくだろうし、一人のドライバーとしては反対だけど、エンジン音もどんどん静かになる」 
「自分が2030年までF1に残ると考えると、それまでに当然何回か優勝しているだろうし、チャンピオンにもなっているはず。野望としては、ハミルトンが今年達成した7回目のワールドチャンピオンの記録を2035年までに抜きたい」

―オフの過ごし方は
「日本に帰ってきてからは、楽しみにしていた日本食を食べている。トレーニング以外では友人とオンラインゲームを楽しんでいる」

―ホンダ車で印象的なモデルは
「一台は『S2000』。まず乗っていて楽しい。VTECが効き始める時の感触や加速感は他では味わえない。もう1台は『シビックタイプR』。シフトダウンした時のオートブリッピングの感じも好きだし、加速感が良いし、何よりデザインが好き」

―最後に日本のファンに向けて自分の走りで注目してもらいたいポイントを
「これから見始める方はF1にしかない速さに衝撃を受けると思う。今の状況はコロナで厳しいが、鈴鹿に足を運んでいただいて目の前で風を切る音を体感してほしい。そこで僕のオーバーテイクやブレーキングを見てほしい」

(水鳥 友哉)