車両軽量化に向けたCFRP部品の量産化技術を開発

 日産自動車は3日、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製部品の成形時間を従来に比べて約80%短縮する生産技術を開発したと発表した。金型内の炭素繊維への樹脂の流れを高精度にシミュレーションする技術を駆使し、樹脂が部品の末端まで行き渡った状態でプレスすることで、しわや折れ曲がりといった成形不良を防ぐ。CFRPの量産化により、電動車の重量低減に貢献。約80㌔㌘の車両軽量化が可能になるという。2024、25年の発表予定の大型SUVの構造部材への適用を目指す。

 CFRPは炭素繊維を樹脂で固めた素材で、強度や剛性と軽量化を両立する。スチールと比べて比重は5分の1である一方、強度はスチールの780㍋ パスカル に対し、600~1600㍋ パスカル と同等以上を確保できる。従来の鉄製の部品をCFRP製に置き換えれば車両の大幅な軽量化を実現できる。電気自動車(EV)用部品の素材として使えば、航続距離の伸長に伴いバッテリー容量などが増える「重量がさらに重量を呼び込むジレンマ」(坂本秀行取締役・執行役副社長)の解決にもつながる。

 一方、課題としてコストと生産性が挙がる。CFRP部品は原料となる炭素繊維が他の部品と比べてコストが高く、鉄部品の約10倍に上るという。製造プロセスも、炭素繊維シートを部品形状に合わせてカット、積層してから成形するなど製造プロセスが複雑化する。このため、日産では現在、「GT-R NISMO」のルーフやフードなど、限定的に採用していた。

 今回、日産は成形時に金型内の炭素繊維への樹脂の流れを可視化するシミュレーション技術を開発した。RTMと呼ぶ方法ではCFRP製部品の成型には、金型にセットした部品樹脂を注入する際、繊維に均一に含浸・硬化させる必要がある。金型内に設置した温度センサーなどから炭素繊維間の隙間を流れる樹脂の動きを可視化し、含浸を高精度に予測する。シミュレーション技術の採用などにより、CFRP部品の開発期間を約50%短縮する。

 また、成形方法は金型を締め切らず隙間を作った上で真空化し、樹脂を注入して炭素繊維に流す工法「C-RTM」を開発。炭素繊維に樹脂を効率的に均一に含浸させ、成形時間を短縮する。

 3日のオンライン会見で坂本副社長は今回の生産技術に関して「量産車に適用するめどが立った」と語った。今後、日産は24、25年ごろの発表を予定する新型車の構造部材など適用範囲を広げる。