ホンダと日立製作所は、傘下にあるサプライヤー4社を経営統合することで合意した。ホンダの貝原典也常務執行役員は「自動車業界は自動運転や電動化などで大きく変化しており(今回の経営統合によって)新たな価値を提供できる」と、ホンダのCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)対応に貢献するとの見方を示した。ITの進展によって自動車産業は急速に変化している。ホンダと日立も、傘下のサプライヤーだけでなく、自社の生き残りをかけて再編に踏み切る。

ホンダ系サプライヤーのケーヒン、ショーワ、日信工業の3社と、日立の完全子会社で自動車部品事業を手がける日立オートモティブシステムズが経営統合することで合意したプレスリリース本文の最後に、ホンダが今回の再編に関するこだわりを示す一文がある。

「関連する事業再編について」で、今回の4社経営統合に伴って、日信工業の持分法適用会社で、回生ブレーキ事業を手がけるヴィオニア日信ブレーキシステムジャパン(VNBJ)と中国のヴィオニア日信ブレーキ・システム中山(VNBZ)の合弁パートナーであるヴィオニアから、VNBJとVNBZの株式をホンダと日信工業が共同で取得することで合意したとある。

VNBJは日信工業の四輪車用ブレーキ制御とブレーキ作動システム事業を、オートリブと合弁化した会社。日信工業はオートリブとの合弁化することで、同事業の拡大を狙ったが、ホンダはこれに不快感を示したという。

CASEと呼ばれる自動車業界の変革に伴って、自動車メーカーはデジタル関連を中心とした幅広い分野へスピード感を持って取り組むことを求められており、開発工数が不足している。このため、電動化や自動運転領域などの先端技術では、傘下の部品メーカーに研究開発を依存するケースも増えている。サプライヤー側も、自動車メーカーのこうした要望に応えようとしている。トヨタ自動車系サプライヤーのデンソーやアイシン精機などは、電動化技術や自動運転技術で合弁会社を設立するなど、グループの技術力を結集している。ブレーキ制御技術は自動運転などの要素技術だ。ホンダから見れば日信工業のブレーキ制御事業の合弁化はホンダのCASE対応に逆行するようにも映る。今回の日立グループとの部品事業の再編に伴ってホンダが日信工業のブレーキ制御事業を取り戻すことへのこだわりは、CASEに遅れることに対する危機感を示している。