三菱電機のEMIRAI S
ボッシュのプレスブリーフィング
NTTドコモ
クラリオン

自動車サプライヤーがMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)やCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)領域での取り組みを加速している。10月24日開幕した「東京モーターショー2019」には、サプライヤー各社が次世代車向け技術を相次いで発表した。自動車メーカーがCASEやMaaS領域に注力している中、先行して技術開発して提案し、事業の拡大を狙う。

三菱電機は、将来のMaaS社会を想定して安心・安全な移動と車内外とのコミュニケーションを円滑にするためのコンセプトキャビン「EMIRAI S」を開発した。生体センシング技術で乗員の健康状態を把握し、危険性を検知すると自動停車する。知らない人同士が乗り合わせるライドシェアなどに活用できる。カメラ映像と音声情報を組み合わせて、どの座席の人が話したのかを聞き分けて、車載AI(人工知能)が対応するHMI(ヒューマンマシンインターフェース)技術も開発した。三菱電機の大西寛常務取締役は「(部品メーカーは)自動車関連機器を提供するだけでなく、その先にあるサービスの提供も求められている」という。

ロバート・ボッシュでモビリティソリューションズ事業部門長を務めるシュテファン・ハルトゥング氏は「ボッシュは現在、自動化、電動化、ネットワーク化に加え、新たなエレメントに取り組んでいる。それがパーソナライズだ」と話す。消費者の意識が「保有」から「利用」へと変化する中、個人がニーズに応じて移動手段を選択できる社会を想定、ドライバーや都市、環境に対する負荷を軽減しながら個人に合わせた移動をサポートする。具体的には、欧州や北米で展開している電動スクーターや車両のシェアリングサービス。電動車のバッテリーの状態をクラウドで監視・分析して、最適な充電プロセスを提案する「バッテリー・イン・ザ・クラウド」も展開していく方針で、日本でも自動車メーカーやモビリティサービスプロバイダーに導入や実証実験を提案する。

半年前にファルシアが買収して発足したクラリオンは、両社の技術の融合して競争力の高い製品を開発していく。基本的にドライバーが運転操作しない自動運転車での乗員への情報提供や、乗員ごとの音声案内や画像表示、高齢ドライバーの状態監視などの技術を開発する。クラリオンの川端敦社長は「これまで注文を受けるスタイルがメインだったが、先行開発して提案していくスタイルに変えていく」と、先進技術領域で積極的に攻勢をかける方針だ。

日立オートモティブシステムズの山足公也CTOは「高信頼なインフラシステムや高安全セキュリティ技術を持つ日立製作所と連携し(電動化、自動運転、コネクテッドの領域について)ワンストップでサービスを提供していく」という。

デンソーの有馬浩二社長は「2年前にCASEに合わせた開発を推進するため、これまでにない知見を採り入れ、新たな伸びを作ってきた」とし、今後もこれら分野に注力する方針。特に、半導体やセンサーなど、非デバイス領域に力を入れて、フィンランドやイスラエルなど、MaaSやCASE領域が先行している地域にテクニカルセンターを拡充、ソフトウェア開発人員も2025年までに1万2000人体制するなどして「ギアを上げてチャレンジしていく」(有馬社長)構え。

自動車業界全体がMaaSやCASE領域の開発を加速していることには異業種も注目している。東京モーターショーには、NTTドコモが出展し、主に2020年春に実用化される5G(第5世代移動通信方式)技術で実現する自動運転車の遠隔操作や、テレマティクスサービス、カーシェアである「dカーシェア」などを紹介。NTTドコモの中村武宏執行役員は「5Gはパートナーと協力して、よりよいサービスをつくりあげることは、高齢者の移動手段確保など、社会的な課題解決に重要」としている。