ホンダ「フリード」
ホンダ「フリード」
ホンダ「フリード」
繁 浩太郎氏(コータロー)

そして乗ってみると…

動的性能は満点ではないか! 一般的に相反する操縦性と乗り心地を両立している。サスはしっかりしていて高速スタビリティー、街中~高速の乗り心地が良かった。特に4人乗った時の乗り心地はさらに良かった。EPS(電動パワーステアリング)の嫌な感触もない。

やはり、全高が1850mm程度の5ナンバーサイズのミニバン「ステップワゴン」より100mmほど背が低い分のメリットがあるのか? しかしそれは以前からあった差異であり、もちろんこの進化はボディー構造やシャシー、タイヤなどの性能向上によるものだろう。

テクニカルにどこをどうしたか? 今度はホンダの開発担当者に聞きたくなった。

ネガティブな部分も少しあった。ボディー塗装の艶感、クリア感が少ない気がした。しかし、確認したらホンダは一部改良で既に改善したと発表していた。

それで、近所の販売店で同色の新しいフリードを確認させてもらったが、確かに艶感やクリア感は良くなっていた。とはいえ、昨日今日の自動車メーカーじゃあるまいし~ね。最初からやっていてほしかった。

スライドドアのレールがなく、結果的にデザインはノッペリした感じだ。また全体的に光り物などがなく「スタンダード感」(商用車感?)を感じる。とはいえ「光り物はね…」というユーザーも多いので、その狙いはわかる。今のユーザーの世代では、これが良いのかもしれない(ルノー「カングー」の潔さ狙い?)。

それでもどこかの1カ所に、光り物というかポイントを入れると見やすくなるかも知れない(しつこい?)。

タイヤのルックスは角がなく〝バルーン的〟で良くないが、性能はドライでの試乗で充分すぎるくらいに良い。タイヤはルックス派と機能派に分かれると思うが、やはり機能派を推したい。

ただ、大昔のホンダ車のように、ホイールアーチとタイヤの隙間が少し大きく見える。つまりルックス的にタイヤの踏ん張り感があまりない。この部分はルックス派をお勧めかな…(勝手な!)。

インテリアでは、目の前のメーターが小さくて少し頼りない感じがする。ただ、今でも手前のステアリングが邪魔して見にくいのに、大きくするともっと見えなくなる。ステアリンググリップは、今の他社の車のレベルからするとチト細い。ユーザーが、太いグリップに慣れてきているとすると、これでは頼りなく感じる。

とにかくフリードは、元々のサイズ感の良さやシンプル感に代表される商品力を持ったまま、動的性能は進化していると感じた。

安心した。後輩は頑張っている。

 

〈プロフィル〉しげ・こうたろう 1979年ホンダ入社、34年間在籍し「CR-Xデルソル」「ライフ」「エリシオン」、2代目「フィット」「N-BOX」など数々のヒット車の開発責任者を務めた。2013年12月定年退職。現在は新聞やウェブ、雑誌で自動車関連記事を執筆している。1952年7月生まれ。