川崎重工業は5月9日、2026年3月期の事業利益(営業利益)が前年度比1.3%増の1450億円と過去最高を更新する見通しだと発表した。トランプ米政権による高関税政策の影響については、二輪車を含むパワースポーツ&エンジン(PS&E)事業に生じるとみており、市場が軟調になるリスクを織り込んだ。ただ、関税負担については反映せず、価格転嫁によって関税によるコストを吸収する方針を示した。
同日、オンラインで開いた決算会見で橋本康彦社長は、米国関税影響について「価格転嫁やコストダウン、競争力のある商品を市場に投入し、影響を最小限にとどめる」と述べた。PS&E以外の事業について米関税政策による業績影響は軽微とみる。
売上高にあたる売上収益は、同8.5%増の2兆3100億円を見通す。為替レートは1ドル=140円と前年度より10円円高に設定。事業利益を341億円押し下げるが、航空エンジンで大幅増収を見込み、円高を相殺する。純利益は同6.9%減の820億円となる見通しだ。
二輪車では関税影響による米市場の需要減退影響を想定するものの、足元の販売好調を踏まえて26年3月期の世界販売台数(卸売ベース)は同5.2%増の50万5000台を計画する。また、橋本社長は米国向けで関税を受ける前の在庫が3カ月分あることを明らかにし「(6月以降)は関税影響を受けるが、3ケタ億円の一番下のクラスだ」と述べた。一方で「幸い、二輪車は顧客から評価を受けており値上げしても売れる」と話し、価格転嫁で関税上乗せ分をカバーする考えを示した。
25年3月期の業績については、売上収益が同15.1%増の2兆1293億円、事業利益は同3.1倍の1431億円だった。四輪車のリコール(回収・無償修理)関連費用などのマイナス影響を織り込んだ前年度実績に比べて大幅に業績を伸ばした。