「自前主義から脱却して、パートナー戦略を具現化させていくフェーズ。しっかりと戦略を立てていきたい」と抱負を語る。
三菱電機は昨年、自動車機器事業について、意思決定プロセスを簡素化し、柔軟で迅速な事業運営体制を目指すため「三菱電機モビリティ」を発足させた。新会社として走り出して1年、そのバトンを受け継いだ。
当面の最大のテーマの一つはアイシンとの協業だ。自社の強みをアイシンのインテグレーション技術と融合させることに取り組む。同じサプライヤーとはいえ、仕事の進め方や社風は異なるが「共通のスローガンも設け、一体感を持って開発が進んでいる」と手応えを話す。
一方で、見直し対象事業の〝出口戦略〟なども課題だが「顧客との関係性は維持しつつ、場合によっては、他社への切り替えをお勧めするようなことも含め、しっかり対応していく」と展望する。
電動化は「まだ先行投資の面がある」とするが、パワーエレクトロニクス技術やモーター、制御などの技術資産を生かしつつ「われわれならではの強みを訴求し、単なるサプライヤーではなく、パートナーを目指す。開発段階から入り込める『ティア0.5』が目標だ」という。
入社以来、技術畑を主に歩み「発電機のエンジニアが長く、いわば〝鉄工所のおやじ〟のような存在でやってきた」と振り返る。それだけに現場主義をこれからも貫く考えだ。
40代半ばのころ、米国勤務をおよそ2年間経験。「『外を見てこい』ということだったんでしょう」。それまで、ほとんど触れてこなかったソフト関係や、ADAS(先進運転支援システム)などを学び、「人間は何歳でも学び、成長できると実感した」と力説する。
会社の苦境を立て直した経営者らの本をよく読む。趣味は、ブームのはるか前からのサウナ。心を無にしてストレス発散に努める。「小さいのを自宅に備えたいくらい。無理ですが…」と苦笑する。
〈プロフィル〉たなか・かずのり 1989年明石工業高専卒。90年三菱電機入社。姫路製作所所長などを経て、2024年12月から自動車機器事業本部副本部長、三菱電機モビリティ副社長などを経て4月1日、同社社長。1969年2月23日生まれ、56歳。兵庫県出身。
(編集委員・山本 晃一)