三菱自動車は5月8日に開いた決算会見で、日産自動車の米国工場に日産と共に投資し、SUVを共同生産する検討に入ったことを明らかにした。三菱自の世界販売台数に占める米国比率は約2割(2024年度)で、主力の東南アジアに次ぐ規模があるが、現地に工場はなく、日本から輸出している。日産と共同生産することにより、重点市場と位置付ける米国でのシェア拡大を図る。同社はルノー、日産とのアライアンスに加え、鴻海(ホンハイ)精密工業など、他社との協業も加速させる。OEM(相手先ブランドによる生産)供給や共同生産などを通じ、現地需要に応じた車種を補完する。
日産の米国工場への投資額や時期、生産車種などは今後詰める。アライアンスを組む日産とは、すでに軽自動車の企画・開発やOEM供給を行っており、今後さらに協業を深化させる方針。グローバルでは次世代ピックアップトラックの共同開発や生産、電動車、電池などでの協業を進める。オセアニア地域では25年、日産にピックアップトラックをOEM供給する。北米では25年度にSUVのプラグインハイブリッド車(PHV)を、日産「ローグ」としてOEM供給する。電気自動車(EV)では26年後半に日産の次期「リーフ」をベースとした新型車を投入する計画だ。
同じくアライアンスを組むルノーからもEVやハイブリッド車(HV)などのOEM供給を受け、25年に欧州で発売する。
ルノーや日産以外との協業も進めている。オセアニアでは26年後半に鴻海からEVをOEM調達する。加藤隆雄社長は「商品ラインアップ、車の大きさ、規制に対応できるかを考えたとき、鴻海の車種が合致した」と経緯を説明した。現段階ではオセアニア地域のみでの販売となる。鴻海を含めた他社との協業については、「アライアンスの中で適当なものがなければ、鴻海に限らず(他社とも)協議して最適な商品を選定していく」(加藤社長)との考えを示した。
同社は23年に策定した中期経営計画で、今後5年間で自社開発のEV2車種を含む電動車9車種を投入する方針を掲げているが、足元ではEVの普及が停滞し、HVやPHVが再評価されている。こうした状況を踏まえ、同社はHVとPHVの開発に専念し、環境規制などでEV投入が必要な地域には主にOEM車種を活用する方針だ。