日産自動車は3月11日、4月1日からの新体制を発表し、オンライン会見を開いた。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は3月31日付で退任し、後任にチーフ・プランニング・オフィサーを務めるイヴァン・エスピノーサ氏が就く。足元では米国事業の低迷などで2025年3月期の業績は800億円の最終赤字となる見通し。こうした状況などにより、内田社長は「従業員の一部から信任を得られない状況となったこと、今回取締役会からの要請があったことを踏まえ、新しい経営体制に移行し、一日も早く再スタートを切ることが会社にとって最善」として辞任。新体制で経営再建を急ぐ。

内田社長は、19年12月に社長に就任。これまでの5年間について「拡大路線からの転換や業績不振など日産特有の課題に加え、コロナ禍など新たな課題に次々に直面し、難しい経営のかじ取りを求められた」と振り返った。

足元では、米国事業の低迷で業績が悪化。24年11月には経営再建策を発表し、9000人の人員削減などの計画を公表。25年2月には3工場の閉鎖など詳細を発表し、構造改革を進めている最中だった。内田社長は「この状況でバトンを渡すことになったのは忸怩たる思い」としたが、「新たな経営陣のもと、従業員の力を最大限引き出して、日産を再び成長軌道に戻してくれることを心から願う」と語った。

次期社長のエスピノーサ氏は、03年にメキシコ日産に入社し、商品企画などを担当。日産取締役会の木村康議長は「日産愛が強く、情熱とスピード感をもって業績回復とさらなる発展をリードしてくれると信じている」と評価する。エスピノーサ氏は「日産(の実力)は『こんなものではない』と心から思っている。そして多くの先輩方の努力を土台とし、世界中の才能溢れる社内チームと緊密に協力して安定性と成長を取り戻したい」と抱負を述べた。

経営再建に加えて、破談したホンダとの経営統合の再交渉や、新たなパートナーとの協業なども新体制で検討するとみられるが、エスピノーサ氏は「憶測の内容についてはコメントできない。まずは(社内の)皆さんと協力して将来に向けた取り組みを進めたい」との発言にとどめた。

新たな役員体制は近く固めるが、社外取締役8人は留任する。現在の日産の経営状況悪化について、取締役会に責任を問う声も上がっているが、木村議長は「責任の重大性は全員認識している。新体制をしっかり構築することが私たちの責任」と述べた。