日本勢の巻き返しも始まったが…(日産自動車のEV)

 自動車部品業界で、中国事業を見直す動きが相次いでいる。小糸製作所は、湖北小糸車灯(湖北省)でテールランプ(標識灯)の生産を終了させると発表。太平洋工業も自動車用樹脂製品の製造・販売を行う子会社を清算する。主要納入先である日本メーカーの中国販売の不振を受けて収益が悪化しており、生産体制の見直しが必要と判断している。

 小糸は4月にも、中国で自動車用ランプの製造・販売を行う子会社の福州小糸車灯(福建省福州市)を解散すると発表したばかり。中国市場で中国製電気自動車(EV)の普及が進み、日系自動車メーカーの不振で収益が悪化していることを踏まえた。今回、さらなる見直しをする形になる。

 湖北小糸の事業のうち、標識灯の生産を2025年度内をめどに中国・広州小糸車灯(広東省広州市)と小糸九州(佐賀市)に移管。これにより湖北小糸は前照灯のみを生産する体制とする。

 湖北小糸の現在の生産能力は、標識灯が年間180万台分、前照灯は同120万台分。小糸の従来の3拠点での稼働率は約5割まで低下していた。福州小糸車灯の解散と、今回の湖北小糸車灯の生産見直しで今後、中国2拠点での前照灯生産の稼働率は約7~8割まで改善するとしている。

 同社は併せて26年3月期の連結業績見通しを発表した。国内や米州での受注車種の増産や為替影響などのプラス要因のほか、中国事業の再編に伴う費用などを織り込んだ結果、前回公表値(4月24日)から売上高は120億円増の8800億円、営業利益は同10億円減の360億円、純利益は同5億円増の225億円に修正した。

 一方、太平洋工業は連結子会社である長沙太平洋半谷汽車部件(湖南省長沙経済技術開発区)を清算する。自動車用樹脂製品の製造・販売を行っているが、現在の中国の市場動向を受け、事業の再編を行うことにより経営資源を効率的に活用するとしている。同子会社の24年12月期の業績は、売上高は1億6200万円、営業、経常とも1億円あまりの赤字だった。

 このほか、トーヨータイヤは中国の生産子会社を現地の同業に売却した。明電舎は、中国にある生産拠点で中国以外の地域向け製品を生産し、稼働率を高める取り組みを進めている。

 年明けから日系自動車各社が「新エネルギー車(NEV)」を相次ぎ投入したり、現地のプラグインハイブリッド車(PHV)向けに日本製部品が売れるなど明るい話題もある。中国での商機と足元の業績をにらみつつ、各社の模索が続きそうだ。