「レジェンド」でレベル3を実現したホンダはアイズオフの実用化を目指す
レベル3走行を想定したハードウエアを搭載するジーカー「7X」

 車両側が運転主体となる自動運転「レベル3」(条件付き自動運転)以上の実用化に向け、官民で動きが出ている。中国メーカーは今年から実用化に向けた動きを本格化させるほか、ホンダも将来の「アイズオフ(目線外し)」の実現を目指している。政府も今年度をめどに、50カ所程度での自動運転移動サービスの実現を目指している。ただし事故のリスクや採算性への懸念は消えず、事業撤退に追い込まれるケースも。普及に向けては、いまだ道半ばの状況だ。

 レベル3は自動車専用道路など特定条件下での自動運転を指す。運転主体は車載システム側に移るが、条件を外れたり、不具合が起きたりした際はドライバーによる操作が必要となる。

 ホンダは2021年、リース販売した「レジェンド」でレベル3走行を実現している。昨年秋には、30年までに高速道路でのアイズオフを速度を問わずできるようにし、その後は一般道でも実現を目指す方針を公表した。センサー類の進化と人工知能(AI)で認識能力を高めていくという。

 ソニー・ホンダモビリティも、今年前半にも先行予約を始める電気自動車(EV)「アフィーラ」でレベル3の実現を目指す。車載される高性能SoC(システム・オン・チップ)は車内のエンターテインメントと運転支援の両面で活用していく。

 政府も高速道路への「自動運転サービス支援道」の整備に向け、今春にもロードマップ(工程表)とガイドラインをつくる方針だ。対象は商用車に加え、レベル3で走行できる乗用車にも広げる検討をしている。レベル4(特定条件下における完全自動運転)の自動運転移動サービスも、27年度に100カ所以上の実現へ、25年度は中間目標年度を迎える。

 実現に向け、とりわけ積極的なのは中国メーカーだ。25年度、日本での事業を始める予定の吉利汽車傘下ZEEKR(ジーカー)は今年、中国でレベル3の実用化を目指す方針だ。同社のほか、比亜迪(BYD)や上海蔚来汽車(NIO)など計9社が政府から公道試験の承認を得ており、開発が進む。

 ただし普及への道のりはいまだ険しい。システム主体の運転と言えど、ドライバー側は走行条件を外れた際に備えて運転を引き継げるよう、構える必要がある。とはいえ、「ハンズオフ」「アイズオフ」状態からすぐに運転動作に復帰できるのか。また事故時の責任の所在はどうなるのか。複雑な道路環境を考えると、製造物責任(PL)や社会受容性の議論が尽くされたとは言い難い。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)は24年12月、子会社クルーズが手掛けていた「ロボタクシー」事業から撤退すると発表した。膨大な開発投資や事業の採算性を検討した結果だという。これにより同社とホンダが26年の実現を目指していた東京都内での自動運転タクシーサービスも見通しが立たない事態となった。

 高度自動運転は高齢者などの運転操作ミスやトラック、バス、タクシーのドライバー不足といった社会課題の解決策として、長らく期待されている。富士キメラ総研(田中一志代表、東京都中央区)は45年にはレベル3車両が2400万台超、生産されると予想する。だが市場が立ち上がる20年代後半から30年代にどのプレーヤーが主導権を握り、どんな利便性をもたらすのか。現時点で明言することは難しいのが実情だ。