三菱ケミカル九州事業所にあるケミカルリサイクル実証設備

 廃棄物を化学的に分解し、新品と同等の品質を持つ原料として再利用する「ケミカルリサイクル」。自動車業界でも使用済み自動車(ELV)から取り外した部品を再利用する方法の一つとして実用化への取り組みが始まっている。

 本田技術研究所と出光興産は共同で「石油ケミカルリサイクル技術」を使ったプラスチックの再資源化に取り組んでいる。2020年代後半にもELVから回収したプラスチックを再資源化するスキームを構築し、量産車への採用を目指す。

 中央自動車工業の子会社で、全損車両の処理関連事業を行うABT(藤本忠社長、東京都千代田区)は、ELVからヘッドランプを回収し、ポリカーボネート(PC)樹脂へとリサイクルする取り組みに着手した。東京海上日動火災保険と三菱ケミカルグループの3社で実証実験も行った。

 タイヤでも取り組みが始まった。三菱ケミカルグループでは、コークス炉で使用済みタイヤからカーボンブラックを再生する事業の検討を始めた。25年度中に世界初となる資源循環型カーボンブラックの販売を目指す。ブリヂストンも精密熱分解(油化)により、使用済みタイヤから素原料を作り出す技術の試験を開始している。

 ケミカルリサイクルは、異なる素材が混在した廃棄物からのリサイクルが可能なため、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に適した技術とされている。欧州では車両製造に用いるプラスチックの25%以上を再生プラとし、このうち25%をELV由来とすることをELV指令で義務付ける方針。30年頃にも適用される見通しで、ケミカルリサイクルはその対応手段としても注目されそうだ。