電気自動車(EV)のゲームチェンジャーと言われる全固体電池の実用化の動きが加速している。トヨタ自動車は2027~28年をめどに、日産自動車は28年度、ホンダは20年代後半に搭載モデルを市場投入する。全固体電池はリチウムイオン電池(LIB)に比べて軽く、航続距離も伸ばせる。各社は材料メーカーとの連携や独自の生産技術によって、実用化に向けて完成度を高めている。
全固体電池はLIBに比べエネルギー密度が高いことや、化学反応が安定しているといった特徴がある。このため、航続距離が伸び、電池の小型・軽量化、充電時間の短縮化を実現できる。トヨタとホンダは、従来のLIBに比べ航続距離を約2倍に伸ばす目標を掲げている。日産は体積エネルギー密度で1㍑当たり1千㍗時の実現を目指す。
性能向上やコスト低減でカギを握るのが生産技術だ。トヨタは貞宝工場(愛知県豊田市)、日産は横浜工場(横浜市神奈川区)、ホンダは栃木県さくら市内の本田技術研究所敷地内にパイロットプラントを設置。日産とホンダは25年に稼働する。
ホンダは、正極層と絶縁層の塗工工程集約や、組み立て工程への「ロールtoロール」方式の採用により製造コストを低減。LIBと同等の航続距離の場合、20年代後半で25%低減、40年代に40%低減を実現する。
日産は材料の混ぜ方で活物質と電解質のすきまを減らしたほか、繊維状の接着剤を用いてイオンの動きを邪魔しないといった工夫をした。生産技術にはエンジン用触媒やプレス、加工、接合などの技術も生かしている。トヨタは出光興産と組み、量産技術の確立を急ぐ。