事故車修理の手間やコストは年々、増えている

 国土交通省は、事故車修理の手間や工賃交渉の実態調査に乗り出す方針を明らかにした。業界で定める「標準作業時間」の妥当性や工賃単価交渉の実態、好事例などを細かく調べ、今後の政策に反映させていく。物価や人件費が上昇する中、中小・小規模(零細)企業が大半を占める整備や車体整備事業者がコストの増加分を工賃などに転嫁しやすいよう国として環境を整え、クルマ社会の安全・安心を保つ狙いがある。

 「自動車整備業の人材確保・育成の推進事業」の一環として2025年度から調査に入る。調査の枠組みや内容はこれから詰める。複数年かけて調査する可能性もある。

 標準作業時間は、事故車の修理工賃を算出する際に用いる物差しの一つだ。損保各社が出資する「自研センター」が一定条件下で車種別に作成した「指数」がその代表例にある。指数に強制力はなく、自社の経営実態を反映させた作業時間を用いて修理工賃を算出する車体整備事業者も一定数いる。

 標準作業時間は、客観性を担保するために第三者の外部調査機関などに委託して調査する。担当者が車体整備事業者を訪ね、各部位の脱着や取替、板金・塗装などにおける作業時間を実際に確認することを想定している。

 損保会社と車体整備事業者が話し合って決める工賃単価(指数対応単価)についても、交渉の好事例を調査する。

 工賃単価は、事故車の修理工賃を算出するために標準作業時間に乗じて用いる。この単価をめぐっては、物価高を踏まえ、日本自動車車体整備協同組合連合会(小倉龍一会長)が交渉根拠を明確にした上で、損保各社との団体交渉を30年ぶりに復活させている。

 工賃に関する交渉に国が関与する権限はないが、深刻化する整備人材不足に対処するためには、作業環境の改善や働き方改革などに加え、待遇を改善することが不可欠だ。車体整備士を含む自動車整備要員の年間給与は上昇傾向にあるものの、2023年度は488万円と、全業種平均より20万円ほど少ない。国交省としては、個々の事業者が作業に見合った適切な工賃を受け取れるよう、調査結果を交渉環境の整備などに役立てていく考えだ。