25日夜(日本時間)にカナダ工場で開いた記者会見
カナダ工場を視察するトルドー首相(中央右)

ホンダは4月25日、カナダに電気自動車(EV)と電池の工場を新設する方針を発表した。オンタリオ州の既存工場隣接地に年間生産能力24万台のEV専用工場を建設し、2028年にも稼働する。電池材料メーカーとの合弁工場を含めたカナダへの一連の投資額は150億カナダドル(約1兆7千億円)になる。短期的には減速感もあるEVだが、EV生産の効率向上と電池の調達安定化に巨額の投資を行い、カーボンニュートラルの実現に向けたEVシフトを推し進める。

30年に年200万台のEV生産体制を構築する計画の一環で、ホンダの最大市場である北米でEVの生産能力を高める。同社は米オハイオ州でEVの生産投資を進めているが、電池に使用するニッケルやコバルトなどの資源が豊富なカナダにも工場を新設する。本社での記者説明会に登壇した青山真二副社長は「30年には北米で80万台程度のEVを販売する」という計画を明かした。

新工場は「ホンダ・オブ・カナダ・マニュファクチャリング」の隣接地に建設する。今後、車両と電池の各工場への具体的な投資内容を精査した上で今秋以降に詳細を発表する。「CR-V」などを生産する既存工場の従業員は4200人だが、今回の投資で1千人を新たに雇用する。

1兆7千億円の投資の中で最も金額が大きいのは、ホンダが初めて単独で立ち上げる電池工場だ。年間生産能力は36ギガワット時。容量70キロワット時のEV換算で50万台分以上の電池に相当する。これまでは電池メーカーとの協業が主流だったが〝手の内化〟で調達の安定化とコスト削減を狙う。新工場で生産する電池は既存電池に比べて20%以上のコスト削減を目指す。電池材料の調達では、旭化成とセパレーター、韓国のポスコと正極材の合弁工場も新設する。

現地政府の補助金やサプライヤーの支出額を除いたホンダの投資額は「150億カナダドルのうち6~7割になる」(青山副社長)とはいえ、EVの普及に不透明感が出ている中での巨額投資にはリスクもある。青山副社長は「当然、いろいろな意味でマーケットのスピード感は変わるため、ある程度の柔軟性は持たせている」とした上で、「カーボンニュートラルを目指す上で乗用車の最適な方法はEVであることに変わりはない」と強調した。

現地で実施した発表会見に登壇した三部敏宏社長は「カナダには主要材料から完成品までEVのバリューチェーンを構築するために必要なものがあると確信している」と語った。