新工場の完成予想図
「北米市場に打って出て勝てると判断した」と話す工藤幸四郎社長

 ホンダと旭化成は25日、カナダで車載用リチウムイオン電池用セパレーターの製造で協業すると発表した。2024年内の合弁会社設立へ具体的な協議に入っている。工場の総投資額は約1800億円で約半額は外部資金の見込み。ホンダはカナダに電気自動車(EV)の生産拠点の新設を検討しており、電池の主要部材であるセパレーターを現地で安定調達する。合弁会社はホンダ以外のEV向け電池にもセパレーターを供給。需要動向をにらんで今回の規模に近い追加投資も視野に入れる。

 合弁会社「旭化成バッテリーセパレータ」を10月を目途に設立し、年産能力が約7億平方㍍の工場をオンタリオ州に新設する。量産開始は2027年の予定。日本政策投資銀行も合弁会社に出資する予定。

 ホンダと旭化成は、中長期的に北米での電動車市場の成長が見込まれることから、車載用リチウムイオン電池の主要部材であるセパレーターを北米で生産する。旭化成の付加価値の高い素材技術やホンダの電動化技術などを組み合わせて、高品質なセパレーターの安定生産を目指す。

 合弁工場で生産するセパレーターは、ホンダがカナダに新設を検討している新工場で生産するEV向けの電池に加え、北米で電池の生産能力を増強しているパナソニックエナジーを含め、ホンダ以外の自動車メーカーのEV向け電池向けに供給することを検討する。

 米中経済摩擦や、EVと関連部材の北米生産を優遇するインフレ抑制法(IRA)によって、北米で製造するEV向け電池部材の需要拡大が見込まれる。

 旭化成では自動車メーカーと合弁生産することについて「異例だが、EV市場は民生と異なり、電池の価値を長く維持していくことも大事。車載用電池について深く理解することが重要」(松山博圭常務執行役員)と説明する。また、ホンダの小澤学執行役常務は「セパレーターは大変重要な原材料で、旭化成とのパートナーシップで生産することは競争力の高いEVを実現し、将来、拡大が見込まれる北米市場の電動化需要に応えるもの」とコメントしている。

 旭化成は車載用電池の成長が見込まれるセパレーター事業を強化しており、約400億円を日米韓の各拠点に投資して塗工膜生産能力を増強、EV換算で約170万台相当の供給能力を目指している。日米韓の各拠点に構築する塗工設備は2026年度上期から順次、稼働する予定。