小型や軽のEVで需要が見込めそうだ(イメージ)

 AESC(松本昌一CEO、横浜市西区)は、LFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)の生産を国内外で始める。2024年度内に米国で量産を始め、日欧でも投資を計画する。車載用や定置用での需要を見込む。現在主流のNMC電池(三元系電池)よりコストを抑えられるLFP電池は、電気自動車(EV)の低価格化につながる。電池の品ぞろえを充実させ、需要増に備える。

 同社は現在、中国・オルドス工場で、定置用や商用車用のLFP電池を生産する。来年度以降、生産網を日米欧にも広げる。

 米国はすでに投資を進めており、24年度内にも量産開始を予定する。米国には現在、スマーナ工場(テネシー州)を持つほか、来年以降にボーリンググリーン工場(ケンタッキー州)、フローレンス工場(サウスカロライナ州)の立ち上げを予定する。

 日本でも量産を計画する。日本には、座間工場(神奈川県座間市)と今春に稼働を予定する茨城工場(茨城県東茨城郡)がある。また、欧州でも、LFP電池の量産に向け準備中だ。英国工場のほか、フランスやスペインにも新工場を建設している。

 EV用電池は現在、正極材料にニッケル、マンガン、コバルトを使用するNMC電池が主流だ。高性能な半面、原材料にレアメタル(希少金属)を用いており、調達リスクを抱えるほか、コストもかさむ。

 一方、LFP電池は、正極材料にリン酸鉄リチウムを用いる。エネルギー密度が低いため航続距離で課題はあるが、NMC電池より価格を約3割、抑えられる利点がある。比亜迪(BYD)や寧徳時代新能源科技(CATL)などが開発を進めており、日産自動車も中期経営計画で28年にLFP電池を軽EVに搭載する方針を公表した。

 今後、電動車シフトが進めば、小型車や軽自動車でLFP電池の引き合いが増すことも見込まれる。AESCとしては、グローバルでLFP電池を生産できる体制を構築し、こうした需要に応える。