日産自動車がリストラ計画「Re:Nissan」で掲げる工場閉鎖について、国内では追浜工場(神奈川県横須賀市)と子会社の日産車体湘南工場(同平塚市)が対象に浮上している。日産は国内で5つの完成車工場を持つ。電気自動車(EV)を手掛ける栃木工場(栃木県上三川町)や収益性の高い大型車を生産する九州の2工場と比べ、追浜と湘南は操業年が古く、稼働率も低迷していた。地元自治体には困惑が広がり、「目先の利益や株価回復へ大ナタを振るい過ぎている」との意見もあるが、日産は聖域なきリストラに踏み込む考えだ。
追浜工場は1961年に稼働した。かつては「サニー」や「フェアレディZ」など日産を代表するモデルも生産していたが、現在は小型車「ノート」とその派生車種のみ。電気自動車(EV)「リーフ」は25年度に発売予定の新型から栃木工場への生産移管が決まっている。その栃木工場はEV生産のマザー工場として、異なるパワートレインの混流生産やロボットを使った省人化などを進めている。また日産自動車九州(福岡県苅田町)は北米向け車種の生産を手掛ける。グループ会社の日産車体九州(同町)も海外市場で人気の大型SUV「パトロール」などを生産し、新市場への投入や増産を見据えた準備を進めている。
他方、日産車体の湘南工場は商用バン「AD」の生産を11月に打ち切り、残るのは「NV200バネット」だけだ。日産車体発祥の地だが、かつて小型トラックなどを手掛けていた「第1地区」は12年に生産を終え、今は「第2地区」のみとなっている。
追浜、湘南とも古く、東北や九州に立地する工場と比べて人員確保のハードルが高いという課題もある。追浜では小型SUVの生産を海外から移管する計画も水面下で検討されていたが、イヴァン・エスピノーサ社長以下の新経営陣は、商品構成や生産車の収益性も踏まえて再検討しているとみられる。
経済産業省は「現時点で日産からの発表ではないのでコメントはできない。ただ、日産は日本国内の工場閉鎖の可能性も排除しておらず、事業再建中だ。その動向に注視は必要だ」(自動車課)とコメントした。また、横須賀市が地元の小泉進次郎元環境相は18日、山梨県甲府市内で報道陣の取材に応え「非常に重要なことなので(日産本社には)説明をしてほしい」と語った。平塚市も19日、情報収集を進めたが、報道以外のことは分からない、としている。