東京商工リサーチによると、2024年度に「賃上げ予定」と回答した企業は、対象企業4239社のうち85・6%を占め、同社が定期的な調査を始めた16年以降で過去最高となった。大企業(回答366社)は93・1%が賃上げを実施する方針だが、中小企業(同3873社)は84・9%となり、8・2㌽の差がついた。

 賃上げ内容については3475社から回答があり「定期昇給」が81・5%、「ベースアップ」が62・5%、「賞与(一時金)の増額」が43・3%だった。産業別では、製造業(同1281社)が88・6%で最多だった。以降、運輸業(同158社)の87・9%、建設業(同609社)の87・8%、卸売業(同948社)の87・2%と続く。自動車では、認証不正を起こしたダイハツ工業を除き、すべての労働組合が前年実績以上の賃上げを要求した。電機大手や鉄鋼系なども、過去を上回る水準の賃上げを要求している。

 賃上げに向けては「製品・サービス単価の値上げ」や「製品・サービスの受注拡大」などで収益を確保し、賃上げに充てる企業が多いようだ。

 賃上げ実施予定企業(同1782社)の賃上げ率「3%以上4%未満」が32・7%で最多だった。日本労働組合総連合会(連合)が掲げる24年春闘方針の「賃上げ5%以上」に沿った賃上げを実施する企業は25・9%にとどまる。東京商工リサーチは「前年度以上の賃上げが現実的ではない企業が多い」と分析する。

 「賃上げを実施しない」と回答した企業は608社で、理由で最も多かったのは「コスト増加分を十分に価格転嫁できていないため」(53・8%)が最多だ。「今年度の賃上げが負担となっている」と答えた企業も16・0%あった。東京商工リサーチは「身の丈を超えた無理な賃上げは企業の業績悪化に拍車をかけかねない」と懸念する。