高炉の脱炭素化が急がれる

 JFEスチールは、西日本製鉄所・倉敷地区(岡山県倉敷市)に新設を予定する大型電気炉で、2027年から自動車用鋼板や電磁鋼板の生産を開始する方針を示した。還元鉄を用いることで、二酸化炭素(CO2)排出量を高炉使用時より約50%削減できる。稼働当初は年産約200万㌧を見込む。自動車のライフサイクルアセスメント(LCA)全体のCO2削減にもつながるため、早期に安定生産できる体制構築を目指す。

 8日に開いたカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)戦略説明会内で北野嘉久社長が明かした。倉敷地区に導入を予定する電炉は、高速溶解などの独自技術と低炭素還元鉄を材料に用いることで「既存の高炉法に匹敵する高品質な鋼材を大量に生産できる」(北野社長)という。実現に向け、今年7月にはドバイの鉄鋼大手エミレーツスチールとの協業を発表、還元鉄を安定して調達できるサプライチェーン(供給網)構築を進めていく。

 電炉では自動車用鋼板や電気自動車(EV)のモーターなどに用いられる電磁鋼板を生産する計画だ。汎用鋼材においては、すでに還元鉄を用いた生産技術が確立されているが、より高い品質が求められる高機能鋼材向けは「還元鉄を用いると電炉の生産性が落ちる可能性があり、超えるべきハードルは高い」(同)。実現できれば、この製法での生産は同社が初となる。安定して供給できる生産体制を構築し、将来的には他の製鉄所に配置する高炉も一部、電炉に切り替えていく考えだ。