英アストンマーティンは、超高性能電気自動車(EV)の開発に向けて、新興EVメーカーの米ルーシッド・モーターズと電動パワートレインおよびバッテリーシステムの調達契約を結んだと発表した。内燃機関(ICE)搭載車が中心のアストンマーティンは、自社ラインナップのEV化に向けて、今後5年間で技術開発に20億ポンド(約3700億円)以上を投資する計画。専門家から評価を得ているルーシッドの技術を活用して、高級スポーツ車分野での優位性の確立を目指す。2013年に結んだメルセデス・ベンツとの技術提携は継続する。
アストンマーティンは、高度な車両制御を盛り込んだEV用の次世代プラットフォーム開発を進めている。超高性能車からスポーツカー、GT、SUVまでをカバー可能な汎用性を持つプラットフォームで、2025年に発売する新型車から採用する計画だ。同時に24年には、同社初のプラグインハイブリッド車(PHV)となるミッドシップレイアウトのスーパーカー「ヴァルハラ」を投入。26年以降には新型車すべてに電動パワートレインをオプション設定し、30年までに主力モデルをEV化する予定だ。
その実現に向けて、ルーシッドを新たなパートナーに選んだ。アストンマーティンのチーフテクノロジーオフィサー(CTO)、ロベルト・フェデリ氏は「ルーシッドとの契約は、当社の電動化戦略の重要な要素で、EV業界をリードするパワートレインとバッテリーシステムの活用が可能になる。自社開発技術と組み合わせれば、ハイパーカーからSUVまでを網羅する独自のEV用プラットフォームが完成できる」と協業への期待を述べた。
ICEの「音」や「フィーリング」など情緒的な評判が高い同社としては、EVへの移行は社運を賭けた決断になるという。ルーシッドのパワートレイン技術とメルセデスの電子アーキテクチャを活用してハイパフォーマンス車の将来像を具体化し、新たなファンづくりにつなげていく考えだ。
例えばエネルギー充放電レスポンスを速めるとともに、正確な電力供給によって各輪の緻密なトルクコントロールを実現し、ICE車にはない新しい運転フィーリングを確立する。吸気系が不要になり、車体やアンダーボディーの整流が改善できるなど、電動化にはさまざまなメリットがあるという。
さらに現在、ブレーキメーカーのブレンボとキャリパーの作動を電動化した最新のブレーキ・バイ・ワイヤの開発を進めており、ブレーキ操作のレスポンス向上やパッド粉の排出削減につながるともしている。
アストンマーティンは電動化をてこに「持続可能な超高級・超高性能ブランド」を具体化し、さらなる成長を目指す。