新型「Eクラス」
助手席ディスプレーはオプション
テールランプに浮かぶブランドシンボル
新型「5シリーズ」
PHVも設定
オンラインゲームはスマホがコントローラー

 メルセデス・ベンツとBMWが相次ぎ主力上級セダンを全面改良した。メルセデス・ベンツ「Eクラス」とBMW「5シリーズ」で、いずれも電動車のラインアップを拡充しつつ、量販が見込める内燃機関(ICE)搭載車の改良にも力を入れた。車両の訴求ではエンターテインメントの充実を前面に打ち出す。環境対応やデジタル技術の導入で過渡期を迎えた現在、両モデルにはこれからの車づくりを模索する自動車メーカーの方向性の一端が垣間見られる。

メルセデス・ベンツ「Eクラス」

 メルセデス・ベンツは新型「Eクラス」を今夏、欧州で発売する。当初導入する6車種のうち、半数の3車種が第4世代のプラグインハイブリッド車(PHV)。ディーゼル車とガソリン車は、それぞれターボエンジンと統合型スタータージェネレーター(ISG)を組み合わせたマイルドハイブリッド車とした。アシストモーターの出力は従来比2キロワット増の17キロワットに引き上げた。

 車体サイズは全長4949×全幅1880×全高1468ミリメートル。デザインは伝統的なスリーボックス・セダンに仕上げた。空気抵抗係数(cd値)を0.23に低減し燃費改善につなげた。

 フロントグリルは、光沢の強い黒色のベースを活用して同社EV「EQ」シリーズとデザインの共通性を持たせた。クロームの縁取りを浮かび上がらせる照明をオプション設定した。テールランプには同社のブランドシンボル「スリー・ポインテッド・スター」が浮かび上がる。

 ホイールベースを従来車比22ミリメートル増の2961ミリメートルに伸ばし、居住性を高めた。荷室容量は最大540リットルとした。

 車内はインストルメントパネル中央に大型表示装置「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)スーパースクリーン」を配置し、ナビゲーションをはじめとした情報や動画などのエンターテインメントを映し出す。助手席側ディスプレーはオプション。ディスプレーやインフォテインメントシステムの制御用コンピューターを統合し、情報処理・表示のスピードを速めた。通信には「5G」モジュールを利用する。

 エンターテインメントではサードパーティーのアプリケーションのインストールに対応。ダッシュボード上に設置するビデオカメラやセルフィー(自撮り)カメラを設定する。「ズーム」などのアプリをインストールすれば車載システムでリモート会議が行える。

 車両デジタルキーとしてアップルの「アイフォン」「アップルウオッチ」を使用できる。デジタルキーは最大16人で共有可能で、運転の可否など権限を細かく設定できる。

 人工知能でエアコン設定などを学習し自動で車内の快適性を高めていく。車酔いの緩和機能「エナジャイジング・コンフォート」「同コーチ」には、システムに乗員の生体データを反映し呼吸法でストレスを軽減する機能の導入を計画する。

 足回りは、減衰力連続可変式ダンパーと空気ばねを組み合わせた「エアマチックサスペンション」をオプション設定して乗り心地と運動性能を高めた。最大舵角4.5度の後輪操舵によって最小回転半径を90センチメートル減らしたほか、走行安定を向上した。

 ドライバーなしの自動バレーパーキング(SAEレベル4)にも対応する。ソフトを事前インストールしていれば、各国の法整備が完了次第、OTA(無線によるソフト更新)によりこの機能を追加する。

 

BMW「5シリーズ」

 BMWは「5シリーズ」を全面改良し10月から順次発売すると発表した。四輪駆動の電気自動車(EV)「i5 M60xドライブ」やPHVを設定するとともに、ガソリン車、ディーゼル車に48㌾式マイルドハイブリッド機構を搭載し、全車種を電動化した。同時にオンラインゲームやビデオストリーミングなどのエンターテインメント機能や運転支援装置を拡充し、プレミアム車としての競争力を高めた。

 車体サイズは全長が従来車比97ミリメートル増の5060ミリメートル、全幅が同32ミリメートル増の1900ミリメートル、全高が36ミリメートル増の1515ミリメートル、ホイールベースが20ミリメートル増の2995ミリメートル。前後重量配分を50対50に仕上げるとともに、車体の結合剛性を高めたことで走行性能と快適性の向上につなげた。車体側面は高いショルダーラインと2本のキャラクターラインでスポーティーさを演出した。

 EVの4WD車は前後輪を個別のモーターで駆動する。最高出力は442キロワットで最高時速は230キロメートル(リミッター作動)。フロア下に容量81.2キロワット時のバッテリーを配置してパッケージングを効率化した。航続距離は455~516キロメートル(WLTP値)。二輪駆動のEV「i5eドライブ40」もラインアップする。同社EVとして初めて認証・決済を自動化した充電システム「プラグ&チャージ」に対応する。

 PHVは24年春に発売予定で4WD車「550e xドライブ」などを用意する。このほかマイルドハイブリッド機構を搭載したガソリン車、ディーゼル車をそろえた。新型6気筒ディーゼルエンジン搭載車を24年に導入する。

 車両システムがドライバーに車線変更を提案する「アクティブレーンチェンジアシスタント」や時速130キロメートルでのハンズオフ走行、自動駐車などの運転支援機構を採用する。

 内装はBMWブランドでは初めて動物愛護の観点でそれらの皮革など使用しない「ビーガンインテリア」を採用した。運転席周辺は操作系をタッチパネルやステアリングホイールに集約し、ボタンやコントロール装置の数を大幅に削減した。ディスプレーは情報を表示する12.3インチと操作に利用する14.9インチ をインストルメントパネルに備える。

 車載基幹ソフト(OS)は「BMWオペレーティングシステム8.5」。車載ディスプレーで、スマートフォンをコントローラーに使用するオンラインゲームやビデオストリーミングが楽しめる。EV充電ポイントの案内など情報機能も充実した。スマートフォンはデジタルキーにも利用できる。「BMW ID」による駐車料金の自動支払いも可能だ。通信には「5G」規格を採用した。

 独ディンゴルフィング工場で全モデルを生産する。同工場ではi5の駆動モーターやバッテリーも製造する。