スペクター
EVでも上質な車内空間を実現
電動ユニット
LEDライトを埋め込んだ「スターライト・ドア」

 英ロールス・ロイス・モーター・カーズは6月30日、ブランド初となる電気自動車(EV)の新型車「スペクター」を日本で発表した。同社は2030年までにすべてのモデルをEVにする方針を掲げており、新型車はその第1弾となる。ロールス・ロイスは22年の世界販売台数が6千台を上回り、過去最高を更新。国内でも数千万円の高額なモデルを取り扱う中、同年は240台を販売し、好調を維持している。こうした中で、世界的に加速する電動車シフトに対応したモデルの投入を急ぐことにより、EVにおいても国内の富裕層のニーズを吸引していく考えだ。

 スペクターは、昨秋に世界初公開していた。定員4人の2ドアクーペ。最高出力が430㌔㍗で、最大トルクが900ニュートン㍍の強力な駆動用モーターを搭載している。駆動用電池の容量は102㌔㍗時で、航続距離は530㌔㍍を確保した。価格は4800万円(消費税込み)から。ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン、長谷川正敏社長、東京都港区)を通じて国内市場に投入するが、納車は10月以降となる見通しだ。

 世界の富裕層に支持されているロールス・ロイス車は、車両の設計でも市販車最高クラスの室内空間の広さや居住性が求められる。重くかさばる駆動用電池を搭載する必要があるEV化には課題も多かったが、「われわれの技術が整い、大きなスペースやサイズの車が造れるようになった」(アジア太平洋リージョナル・ディレクターのアイリーン・ニッケイン氏)ことでクリアした。

 同氏は「ロールス・ロイスらしさを妥協することはない」と、仕上がりに自信をみせる。新型車は国内市場で、新規客開拓の役割も担う。EVならではの先進性や最新のコネクテッド機能を武器に、富裕層を取り込む狙い。その上で、「30年の全モデルEV化に向け、第2弾、第3弾を投入する」(同氏)ことで、強固な顧客基盤を国内で築いていく考えだ。