マイバッハ初のBEV「EQS 680 SUV」
後席用モニターを完備
窓枠をメッキトリムで囲み居住空間の広さを表現

 メルセデス・ベンツは、高級SUVのバッテリー電気自動車(BEV)「メルセデス・マイバッハEQS680SUV」を公開した。同社の最上級ブランド、マイバッハ初のBEVで、メルセデス「EQ SUV」をベースに開発。後席の快適性を最優先してパワートレインや走行制御、インフォテイメントなど随所に最新技術を盛り込み、先進性とラグジュアリー感を訴求する。さらに生産段階の温室効果ガス発生を抑えるため、鉄鋼やアルミニウムの再生材を積極活用した。発売日・価格は未公表だが順次、市販モデルの生産体制を整え高級SUV市場で拡販を目指す。

 外観は、縦方向のクロームメッキトリムを持つマイバッハ独自のフロントグリルデザインを踏襲しながら、グリル本体はEV化を生かしてスリットのないフラットな表面とした。さらにレーダーセンサーの露出を抑え見映えを向上。各ドアには、マイバッハのブランドマークを路上に描き乗車前の人を迎えるプロジェクションを装備する。

 車体側面は太いクロームで囲った窓やメッキトリムでアクセントをつけ、リアシートの居住スペースの広さを強調した。軽合金製タイヤホイールは21インチおよび22インチサイズを設定した。外板色はツートーンカラーで、ピンストライプを施す。手作業で塗装される。

 車室内は従来からのコンセプト「良いものは美しいものであるべき」に基づき、さまざまな趣向を凝らす。内装色は深いブルーを基調とした特別デザインとした。操作システム「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)ハイパースクリーン」は、インストルメントパネルの運転席側、センター、助手席側にそれぞれディスプレーを設置。画面の立ち上げ時に専用アニメーションを映し出す。

 中央ディスプレーはカーナビゲーションの表示が主な用途。システムが状況に応じてドライブに関連したさまざまな提案を行うほか、ドライバーのニーズに応じたパーソナライズが可能という。アプリケーションの変更なしで直接8割ほどの項目を操作できる。後席乗員向けには前席背面両側に11.6インチディスプレーを設置、インフォテインメントを楽しめる。後部座席からカーナビ目的地が設定できる。

 シート表皮など内装材には、同社初となるコーヒー豆殻のタンニンでなめした皮革を採用した。クロム材によるなめしよりも作業に長い時間がかかることが欠点だが、植物由来とすることでなめし後の廃棄物がたい肥や断熱材に再利用できるなど、持続可能な加工手法であるため採用した。同時にリサイクル鋼や再生アルミニウムの活用を増やした。これらによって車両とバッテリーの生産を予定する米アラバマ州の工場では、2023年末までに生産時の二酸化炭素(CO2)排出量を20年比で半減する計画だ。

 後席にはシートエアコン、マッサージ機能を備える。助手席後方の後部乗員が「リクライニングポジション」を選択すると、助手席が前方に移動するなどシートレイアウトを自動で「ショーファーポジション」にアレンジする。高速充電対応のUSB―Cポートを4カ所、HDMI入力端子2基を備える。253個のLEDと64色のコーディネートで室内を彩るアクティブアンビエントライティングを搭載する。

 空調は、外気導入モード時にも有害物質の流入を防ぐ活性炭フィルターを装備。車内外の微粒子濃度をモニター上で比較できる。フレグランス機能も持つ。音響装置は15スピーカーの4Dサラウンドシステム。原音に忠実な楽曲再生に取り組んだ。

 NVH(ノイズ・振動・ハーシュネス)対策の基本はベース車同様で、前後の電気駆動システムを「カプセル」で包んだり、フレーム類の二重遮蔽などで遮音・吸音を徹底した。その上でリアシートのさらなる改善を図った。

 まず、SUVの2ボックススタイルながら、人工皮革で覆った荷室カバーをセダンの隔壁(バルクヘッド)のように固定。さらに状況に応じて前輪モーターの駆動を停止したり、パノラマルーフの風防やウインドシールの工夫による風切り音低減、前窓に音響特性に優れる強化合わせガラスを使用するなど、現在の技術で最大限の騒音対策に取り組んだ。

 足回りは、エアサスペンションを基本に減衰力の連続可変機構を備える。地上最低高を35ミリメートル上げられる。制御モードは「エコ」「スポーツ」などに加えて、後席の快適性を最優先して揺れを最小限に抑える「マイバッハ・ドライブプログラム」を用意した。最大切れ角4.5度の後輪操舵機構によってコンパクト車並みの最小回転半径を確保した。