SOEC実証施設

 デンソーは27日、主に電子部品を生産する広瀬製作所(愛知県豊田市)に水素製造装置のSOEC(固体酸化物形水電解用セル)を設置したと発表した。同社が開発したSOECを工場に導入するのは今回が初めて。製造した水素は7月からパワーカードの試作品製造ラインで活用する。SOECの動力源は導入当初、外部から購入したグリーン電力を利用するが、2025年以降は同製作所内に設置する太陽光発電システムの電力でまかない、水素の「地産地消」を実現する。

 SOECは、セラミック膜を電解質として約700度の高温で作動し、水蒸気を電気分解して水素を製造する。デンソーが開発したSOECは、温度を最適に制御する技術や効率的に電気分解するセラミック技術、水蒸気を装置内に再循環させるエジェクター技術など自動車部品で培った技術を生かしている。

 製造した水素はインバーター構成部品の一つであるパワーカードの試作品ラインで、はんだ付け工程で酸化物を除去して接合性を向上させる還元剤として使用する。外部購入した水素を使用する製造ラインと併用することで、製造の安定性や生産品質に与える影響などを検証していく。

 デンソーは3月、子会社のデンソー福島(福島県田村市)にトヨタ自動車が開発した水素製造装置を導入済み。デンソー福島で導入したのは、高分子膜を電解質とするPEM形水電解装置で、トヨタの燃料電池車「ミライ」の燃料電池スタックを活用した。また、西尾製作所(愛知県西尾市)では、水素と酸素の化学反応で発電するSOFC(固体酸化物形燃料電池)を設置し、エネルギーマネジメントシステムの実証を開始。水素エネルギー活用を加速する技術開発を急ぐ。