ホンダの二輪事業は好調だ(タイ)

 ホンダを主納入先とする上場部品メーカーの今期業績は明暗が分かれそうだ。半導体不足の影響が残るほか、ホンダの中国での販売低迷や、米国での労務費、物流コストなどの上昇が一部サプライヤーの経営を圧迫する。ただ、好調なホンダの二輪車事業を経営の柱としている部品メーカーや、ホンダ以外の事業を伸ばす部品メーカーの業績は回復に向かう見通しだ。

 ホンダの2023年3月期のグループ四輪車売上台数は半導体不足などで368万7千台(前期比9・5%減)と大幅に落ち込んだ。24年3月期は435万台と2割増を見込むが、この計画を部品メーカーがそのまま受け入れているわけではない。

 多くの部品メーカーが計画の下振れを今期業績見通しに織り込む。当初の生産計画の修正が前期に相次いだためでテイ・エス テック(TSテック)の保田真成社長は「まだ半年は半導体不足の影響は残る」と見る。ユタカ技研の清水克訓執行役員も「100%受注した分を供給できると見ていない。少し減ることを織り込んで見通しを立てている」と明かす。

 部品各社が特に懸念しているのが中国市場だ。八千代工業の可知浩幸社長は「(ホンダの示した計画から)減らしている。半導体に加えてマーケットの影響があるためで、中国の回復は見通せない」と語る。エフテックの福田祐一社長も「足元のホンダの中国事業は厳しい状況だ。日系自動車メーカーの勢いがなくなり、地場系が伸びている。潮目が変わってきた」と話す。こうした〝潮目〟を踏まえ「他の自動車メーカーからの受注を獲得する活動を推進する」(TSテックの保田社長)など、ホンダ以外の取引先を開拓する動きもある。

 人件費や物流コストが高止まりする米国事業も各社の頭痛の種だ。エフテックは米国工場に自動化設備を積極的に導入して生産効率化を推進する。福田社長は「労働市場がひっ迫して、離職率も高い北米で労働者不足対策に重点的に取り組む」と話す。

 今期業績の回復を見込む部品メーカーでは、ホンダ以外の新規取引拡大や、二輪事業の成長を見込むケースが目立つ。エフ・シー・シーは主力の二輪事業が好調で今期は営業増益を見込む。四輪車用クラッチ事業の納入先構成比でホンダ向けは前年同期から5・6㌽下落し、28・2%と3割を切った。代わって構成比の上昇を見込むのがフォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)、ステランティスといった米国系だ。

 エフテックの前期北米事業は営業赤字だったが、新規受注した部品の量産が本格化する今期は大幅な営業黒字に転じる見通し。TSテックも「米州を中心とした増産効果や収益改善の取り組み」(同社)で今期は増益を見込む。

 前期に中国事業の損益が大幅に悪化した武蔵精密工業は、日産自動車や中国・比亜迪(BYD)、長安フォード向けに四輪部品、英トライアンフのタイ工場向けに二輪部品などを新規受注し、今期は営業増益を予想する。

 ホンダを主納入先とする上場部品メーカーにとって、事業ポートフォリオを見直し、リスク分散することが持続的な成長のカギを握りそうだ。