インタビューに応じる佐藤社長(代表撮影)

トヨタ自動車の佐藤恒治社長は4月21日までに日刊自動車新聞などの取材に応じ、環境対応について「最終の目的は二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすこと。電気自動車(EV)はその手段に過ぎない」と述べ、あくまでCO2削減を目的にEVの展開も進める考えを示した。CO2排出量を2035年に19年比で50%以上削減することを責任が伴う数値目標に据え電動化を推進する。市場が拡大する新興国についても「新興国に蓋をしてCO2の問題は語れない」とし、ハイブリッド車(HV)も活用しながらグローバルでの環境負荷低減を図る。EVについては「現状の需要や市場からの期待値は思っていたよりも大きい」と述べ、26年に投入する次世代EVで本格的な巻き返しを図る。

新体制で臨んだ7日の記者会見で佐藤社長が「一番思いを込めた」という発表内容が、35年に19年比でウェル・トゥ・ホイール(油井から車輪)のCO2排出量を50%以上削減するという目標だ。トヨタはこれまで30年までに19年比で33%以上削減する目標を設定していたが、さらに排出削減を加速する。

目標達成の鍵を握るのは新興国でのHVだ。調査会社のS&Pグローバルによると、世界の新車販売台数は19年の8991万台から、35年には1億368万台へ拡大する見通し。先進国市場はクルマの使い方の変化などで減少局面に入る一方、新興国市場は右肩上がりで増加し、世界市場に占める新興国の構成比は、現在の5割から6割以上に高まると試算する。

こうした地域の中にもEVの産業振興を目指す国は一定数存在するが、エネルギーや経済状況などの課題は先進国よりも大きい。トヨタは1997年の「プリウス」の発売から25年間かけて、コストを6分の1まで低減してきたHVで、新興国のCO2削減を図りながら、EVなどへの投資の原資を稼ぐ絵を描く。

そのEVについて佐藤社長は、「現状の需要や市場からの期待値は思っていたよりも大きい」との認識を示した。7日の会見では、残り3年でEV販売を現在の60倍に当たる150万台に増やすという数字を公表し、スピード感をもってEVの選択肢を増やす考えを示した。

一方で、電池や現地化の必要性が高まる米国や中国の生産拠点への具体的な投資計画は示しておらず、計画の実現性には不透明さも残る。佐藤社長は、「投資規模もEVの販売台数(計画)も方法論。状況が変われば変わるので、(達成状況を)トラッキング(追跡)されることに違和感がある。トラッキングすべきはCO2」とし、柔軟に手段を選択し、目的のCO2削減を目指す考えを述べた。その上で「EVに関する情報量が少なかったことは反省している。今後は情報量を増やしていきたい」と話した。

記者団から「佐藤風味をクルマづくりや経営戦略にどう盛り込むか」と問われた佐藤社長は、「私はエンジニア。章男会長がつくった価値観を基に、ソリューションを具体化することが自分の役割だ。『トヨタは結局、何をするの』の“何”の部分を実行する」と答えた。豊田章男氏が築いた土台の上で、今後のトヨタがどのように進化するのか。佐藤社長の手腕が注目される。