「中国専用EVの開発を現地で強化・推進していく」と語る中嶋裕樹副社長

 【上海=福井友則】中国・上海市で18日、第20回「オート上海2023(上海モーターショー)」が開幕した。トヨタ自動車が電気自動車(EV)「bZ」シリーズの新型コンセプト2モデルを、日産自動車も新たなEVコンセプトモデルを初公開した。ホンダはEVのプロトタイプやコンセプトモデル計3車種を展示するとともに、EV比率を2035年に前倒しして100%にする方針を示した。世界一のEV市場である中国では米テスラや現地の専業メーカーが販売を伸ばすが、日本メーカーも反転攻勢に打って出る。

 トヨタは、「bZ4X」「bZ3」に次ぐ、「bZスポーツクロスオーバー」と「bZフレックススペース」のコンセプトモデルを世界初披露した。bZスポーツクロスオーバーは、トヨタと比亜迪(BYD)の合弁会社・BYDトヨタEVテクノロジーカンパニー(BTET)と一汽トヨタ、豊田汽車研究開発センター(TMEC)との共同開発車だ。一方、bZフレックススペースは、トヨタと広州汽車集団(GAC)、広汽トヨタ、TMECの共同開発車で、それぞれ一汽トヨタ、広汽トヨタが生産と販売を担う。中嶋裕樹副社長は「中国は電動化と知能化で先頭を走る市場だ。今後も中国専用EVの開発を現地で強化・推進していく」と語った。

 ホンダは、中国専用のEVブランド「e:Nシリーズ」第2弾となる「e:NP2」と「e:NS2」のプロトタイプ、第3弾となる「e:N SUV序」のコンセプトモデルを世界初公開した。市販を控えたプロトタイプ2種は、動力性能やデザイン、機能性など従来の枠にとらわれないEVならではの新たな価値観を打ち出した。

 第3弾のコンセプトモデルはEV専用プラットフォーム「e:NアーキテクチャーW」を初採用し、ホンダらしく「走る楽しさ」を追求したという。いずれも24年内に発売する。スポーツモデル「e:NGT」は25年以降に発売する。

 また、ホンダはこれまで「35年に80%」としていた中国新車販売に占めるEV比率を同年に100%にする方針も発表した。「30年以降に投入するモデルは全て電動車にする」としていた計画も「27年以降」に前倒しする。27年までに10車種のEVを投入し、EVシフトを加速させる。青山真二副社長は「(e:N SUV序は)電動化目標の実現に向け、新世代を切り開いていく1台だ」と語った。

 日産自動車は、次世代EVのコンセプトモデル「アリゾン」を発表した。「CMF―EVプラットフォーム」を採用した低重心な車体に自動調光のサンルーフやセンターピラーレス構造を採用して開放感を演出したことが特徴だ。乗員ごとに最適な情報を提供するパーソナルアシスタントシステム「エポロ」も搭載した。アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は「日産のイノベーションが中国のユーザーに計り知れない恩恵をもたらすことを確信している」と強調した。

 マツダは上海モーターショーに先駆け、16日に開いたイベントで電動化方針を表明した。長安マツダ、長安汽車、マツダが共同開発した電動車を24年末に導入し、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)を設定する。「CX―50」にハイブリッド車も追加する。

 中国市場では、22年に前年の約1.8倍にあたる約536万4千台のEVが売れた。中国の専業メーカーや欧米勢に後れを取った日本勢も相次ぎEVを投入し、巻き返しを図る。