SDGsの推進に外部の仕組みを活用することも有効

 自動車業界で、SDGs(持続可能な開発目標)を推進する動きが活発になっている。自動車メーカーやサプライヤーをはじめ、中小・小規模事業者が多い流通業や整備業にも広がりつつある。特別な取り組みだけではなく、それぞれの事業者が地域社会で営んでいる事業活動を通じ、できることからSDGsにつながる施策を取り入れる事例も目立ってきた。業界団体もこうした流れを後押ししており、今後、より具体的な活動に発展しそうだ。

 SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれた16年から30年までの国際開発目標。貧困や質の高い教育、産業と技術革新など17の目標があり、それぞれ169のターゲットが設けられている。

 自動車整備業では、全日本ロータス同友会(小川晃一会長)が22年に「SDGs宣言」を行った。鈴木貴大本部経営委員会委員長は「SDGs活動の持続にはわれわれが収益を確保し、会社を存続し続けていくことが大切」と指摘。同会は本業を通じた社会の課題解決でSDGsに向き合う。

 例えば、鈴木委員長は「日ごろのオイル交換やエンジンを調整することが地球のため、交通安全につながる」とみている。車両を適切な状態に維持すれば、環境負荷の軽減につながるほか、各機能が適正に作動することで事故を避けやすくなる。さらに、「法人税を納めることそのものが社会貢献になる」とし、SDGsと経済活動がリンクしているとの考えだ。さらに、こうした取り組みを通じて「社会に貢献していることを実感できれば、ものすごいパワーになる」と、会員各社の士気向上にも役立つ。このため、SDGsと経営を結び付けた「SDGs経営」を掲げ、継続的な活動に力を入れる。

 ただ、SDGsの実現にはさまざまなアプローチがある中、具体的な取り組みを前に、足踏みしてしまう事業者も少なくない。そこで外部の仕組みと連携し、効果を享受する方法をとる事例もある。日本自動車リサイクル部品協議会(佐藤幸雄代表理事)は、かねてからリサイクル部品の利用による二酸化炭素(CO2)削減効果を数値化する「グリーンポイントシステム」を07年より運用している。リサイクル部品が環境に優しいというメリットを訴求するための取り組みだが、ここ数年は整備事業者や整備関連団体からの問い合わせが顕著に増えているという。

 ディーアイシージャパン(DICジャパン、小坂誠代表取締役、東京都千代田区)が手掛ける「グリーンビズシステム」も、整備事業者とその顧客であるユーザーが一体となって脱炭素社会を共創する仕組みとして注目を集めている。整備工場が自社で消費する電力分について、DICジャパンを通じて太陽光発電などのグリーン電力を購入。この分を、整備事業者が自社のユーザーに環境貢献度をポイントとして還元することができるサービスだ。例えば、整備に使用した電気をグリーン電力でまかなえれば、車検で入庫した場合は電力5㌔㍗分のCO2削減に貢献したことになるという。

 このような仕組みを取り入れれば、投資余力に限りがある整備事業者もSDGsに取り組みやすくなる。まず、できることから第一歩を踏み出し、これを継続すれば大きな成果につながる可能性がある。

 ◆月刊「整備戦略」2023年4月号で特集「整備業が取り組むSDGs」を掲載します。