洗車の作業改善、事業化への関心は高まっている(写真はキーパーラボの作業風景)

 洗車は自動車を取り扱う多くの事業者にとって、日々、頻繁に行う業務の一つだ。整備業では車検など作業の仕上げに、車両販売業では納車時や展示車のメンテナンスでも実施している。しかし、ここ最近は現場の人手不足が深刻化している。顧客に喜ばれる洗車サービスを維持していくため、いかに作業の負担を軽減していくかが大きな課題になっている。各社は洗車を自動化や省力化できる機器・ツールの導入を進めるなど、さまざまな取り組みを進めて課題解決に力を入れている。

 洗車の労力を軽減するには洗車機材の導入、作業方法や人員配置などのオペレーション改善がポイントとなる。洗車機材で一般的な門型洗車機は傷が付きにくい素材のブラシや節水仕様、省スペース設計など性能が向上した機種が増えた。今ではボディーコーティングを施工した車でも洗車機の使用に問題はないレベルまで進化しており、より多くの事業者で導入が広がっている。日本自動車機械工具協会(機工協、柳田昌宏会長)がまとめた2021年度の「自動車機械工具販売実績」でも、門型洗車装置(小型・普通車用)は台数、金額ともに増加したこともこうした流れを裏付ける。

 作業の自動化で生産性を高める動きがある一方、手洗いの洗車作業でも業務改善への期待が高まっている。こうした声に、洗車用品を販売している本荘興産(平井新一社長、岡山県倉敷市)は、専用ツールを活用した洗車の効率化と有料化を図れるビジネスモデルを構築した。モップ型の手洗い洗車ツール「ウォッシュマン」を使うと、スポンジで手洗いするよりも作業時間で約40%削減、身体の負荷も60%以上軽減が図れるという。効率的かつ作業の負担が少ない洗車が可能になれば、「女性や高齢者などの人材にも洗車作業を任せられる」(平井社長)とし、人材の活用の幅を広げられるとしている。

 水を浄化することで、洗車の手間を省く試みもある。マーフィード(池田比呂志社長、横浜市中区)が販売する浄水ユニット「ハイパーウォーター」は、水道水などに含まれる鉱物をフィルターで4段階にろ過。純度99・99%以上に浄水した〝超純水〟で洗車できる。水を拭き取らなくてもボディーに水シミが付着しない特性があり、作業の効率化が図れるアイテムとなっている。

 一方、有料の手洗い洗車とボディーコーティングの提供で業績を伸ばしているのが、キーパー技研だ。ガソリンスタンド(給油所)を中心にした「キーパープロショップ」、直営の「キーパーLABO(ラボ)」を通じ、主体のコーティング施工に、洗車も取り入れることでリピーター獲得につなげている。女性をターゲットにした新しいコンセプトのコーティング商品も今期から発売し、さらなる市場拡大を狙う。

 「今後、自動車が進化しても洗車は無くならない」というのが、多くの業界関係者の見立てだ。将来の事業戦略に向けて、現在の洗車の取り組みを見直し、設備投資やオペレーションの改善などを進めていくことが大事になりそうだ。

 月刊「整備戦略」2022年11月号で特集「洗車、周辺サービスに取り組む」を掲載 します。