HVのリサイクルではリビルトバッテリーの需要が増加

 自動車リサイクル事業者は、使用済み自動車(ELV)を素材として再資源化するほか、「使える部品を再使用する」という観点からリサイクル部品の生産、供給を行っている。同部品を整備工場、板金塗装(BP)工場が活用していく流れは、社会的な脱炭素化に沿った行動であり、循環型社会を形成する上でも重要となる。

 しかしながら「リサイクル部品を探しても納品率(ヒット率)が低い」という声が、かねてから整備事業者の間にあった。加えてコロナ禍による新車の納期遅れがELVの発生量に比例し、リサイクル部品の生産、供給にも影響が出ている。日本自動車リサイクル部品協議会(JAPRA)の佐藤幸雄代表理事は「部品オーダーに対するヒット率は3~4割と言われて来たが、今はさらに下がっている」と、現状をとらえている。そうした課題に対し、「整備工場、BP工場がもっとリサイクル部品を利用しやすいよう、環境を整備することが必要」(佐藤代表理事)との声が業界内で上がっていたが、ようやく山が動こうとしている。

 リサイクル部品団体が運用している各流通システムを連携させる〝オールジャパン〟によるシステム運用の構想が進められている。JAPRAに参画する12団体の部品流通システムが相互に連携し、今期中に部品供給が行える体制づくりを目指す。全国の多くの在庫から必要な部品を、より近いエリアから探して供給できるため、ヒット率の向上に加えて、地産地消を促してトラック輸送のコストと二酸化炭素(CO2)削減を促進する。厳しい業界の環境変化を乗り越えるべく、各団体が協調して連携を図っていく構えだ。

 一方、新たな部品の取り扱いも課題となる。例えば、先進運転支援システム(ADAS)搭載車のセンサー付きバンパーや電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)に搭載されている駆動用バッテリーといった部品をリサイクル事業者がどう取り扱っていくかだ。センサー付きバンパーは、大抵は事業者がスキャンツールなどで機能に不具合がないことを確認した上で登録、販売されているが、使用段階での機能が保証されているわけではないため、整備工場は再利用に慎重にならざるを得ない。バンパーの再利用が減れば、自動車シュレッダーダスト(ASR)の発生につながるため、中長期的な対策が求められる。

 バッテリーはHVのニッケル水素バッテリーでは、すでにリビルト部品の生産、流通が行われており、補修部品として高い需要がある。一方、リチウムイオンバッテリーは自動車メーカー中心に蓄電池として2次利用するなどのスキームが進められている。ニッケル水素バッテリーのリビルト品の生産で特許を取得しているユーパーツ(埼玉県熊谷市)の清水道悦社長は、「素材の異なるリチウムイオンバッテリーでは、より高い精度が求められる。研究を進めているが、ニッケル水素バッテリーのように自動車から自動車への補修部品としての供給は考えていない」という。EVのELVが増加する段階に備え、同バッテリーの活用をどこまで有効に進めていけるかは継続的な研究課題となる。

 月刊「整備戦略」2022年7月号で特集「SDGsから考えるリサイクル部品の活用」を掲載します。